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絞り椿となりて永遠に咲く26

「……は、はは……やった……。ついにやったぞ……! これであの邪魔なヤクザ野郎ともおさらばだ。あと少しでここは吹っ飛んじまう!」  元々普段から人の立ち入ることのない廃倉庫街だ。大通りには侵入禁止の看板とテープによる規制線が貼られているものの、建物周辺には特に囲いなどはない。発破解体後に鐘崎らの遺体が見つかったとしても、無人で遠隔操作される実験現場のことだ。何も知らない鐘崎らが勝手に迷い込んで、運悪く爆破に巻き込まれただけだと処理されるだろう。狭い部屋に撒いた薬品は強力だ。丸一日は目を覚ますこともない。と同時に、解体後は気化した薬品の痕跡も瓦礫に紛れて消えてしまうだろう。 「やった……。やったぞ! これであの人は……紫月さんは俺のモンだ!」  狂気的な高笑いと共に三春谷はその場を後にした。 ◇    ◇    ◇  それから二時間が過ぎた頃だった。  鐘崎から帰宅するという電話を受けていた紫月は、組事務所で亭主の帰りが遅いことに気を揉んでいた。 「……っかしいなぁ、遼のやつ何やってんだべ……」  『今から帰る』と電話が来た時間から考えればとっくに着いていてもいいはずだ。仮に例のラウンジに寄ってケーキを買ってくれたとして、渋滞を見込んでもこれほど時間が掛かるはずはない。 「急な仕事でも入ったんかな……」  そうであれば邪魔になってはいけないと思いつつも、とにかくは電話だけでもと思い、かけてみたが繋がらない。コール音はするものの留守番電話になってしまうのだ。  一応メッセージを残して清水にもかけてみたが、同じく留守番電話になるだけだ。それならばと運転手の花村にかけて、初めて非常事態を予測させられることとなった。 『実は……若たちはまだ車に戻って来られておりません。確か――私立探偵とおっしゃるお方にお会いになるとのことでしたので、お話が長引いていらっしゃるのかと……」  とはいえ、指定された場所は海沿いの遊歩道で、ホテルのラウンジやバーなどの室内でもない。外での立ち話にしては幾分長過ぎるのでは――と、花村としても気に掛かっていたらしく、かといって車を離れるわけにもいかずに、どうしたものかと思っていたそうだ。 「そっか……。やっぱり何かあったのかも……」  すぐに鐘崎の現在地を探査に掛けると、場所は汐留近くの倉庫街と反応が出た。 「花さんの車からそんなに離れてねえな……。ってことは、まだ打ち合わせ中なんか?」  だが、花村が言っていた私立探偵と会うという言葉が気に掛かる。 「けど、私立探偵って……何の用なんだ?」  朝方、組を出ていく時はそんな打ち合わせがあるとは特に聞いていなかった。ということは、依頼の仕事の後でその私立探偵とやらに会うことが急遽決まったということだろうか。  紫月はすぐに源次郎へと報告し、対応を検討することにした。

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