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絞り椿となりて永遠に咲く27

「若が帰っていらっしゃらないですと――!?」  何か緊急事態であれば、例の暗号化されたメッセージなどが受信されることになっているが、源次郎のところには何も届いていないという。 「場所は汐留でしたな? 姐さん、我々も現地へ行ってみましょう!」 「すまねえな、源さん! 世話掛ける」  紫月と源次郎は橘や春日野ら若い衆数人を伴って鐘崎のGPSが示す汐留へと向かった。その車中で源次郎が更に詳しい場所を探査に掛ける。 「ここは――どうやら海沿いに近い倉庫街のようですな。ですが……確かこの辺りは昭和の初期に建てられた倉庫だとかで、数年内に建て替えられる予定になっていると聞いた覚えがあります……」 「ってことは今は使われてねえってわけか?」 「――おそらくそのはずですが」 「廃倉庫か……。嫌な予感がするな」  もしかしたら鐘崎と清水は私立探偵という男と会った後に何かの事件に巻き込まれたのかも知れない。 「ですが若は『今から帰る』と姐さんに電話をされているんですよね? その時のお声の感じはどうでしたか?」  切羽詰まっていたり、変わった様子は無かったかと源次郎が尋ねる。 「いや……特に変わった様子はなかったな。例のラウンジに寄ってケーキ買って帰るって言ってくれてたし、いつも通りだったけど」  とするなら、その時点で私立探偵との用事は済んだことを示している。異変が起こったのはその直後ということだろう。 「花村さんの車はこの倉庫街を抜けた大通りに停めていたそうですから、やはり姐さんへのお電話の直後に何かあったと考えるべきでしょうな」  鐘崎と清水のどちらとも連絡が取れないということは非常事態が予測される。 「スマフォのコール音がして、GPSが生きてるってことは、スマフォ自体はここにあると見て間違いねえ。問題は遼たちがこの場所に居るとは限らねえってことだが……」  仮に何者かによる拉致だったとして、スマートフォンを取り上げられ、鐘崎と清水は既に拘束されてどこか別の場所へ連れ去られた可能性もある。 「若の刺青に付けてあるピアスのGPSはどうでした? 実は今探査に掛けているんですが反応が出ません」 「やっぱ繋がんねえか……。俺もさっき事務所で調べたんだけど反応が無えんだ。繋がったのはスマフォの方だけで」  ということは、やはりスマートフォンだけが置き去りにされて、本人たちは連れ去られたという可能性が出てくる。実のところ鐘崎の肩に付いているピアスのGPSは、薬品による目眩で倒れ込んだ際にぶつけてしまっただけなのだが、状況を知らない紫月らにとっては連れ去られたかピアスの所在に気付かれて潰されたかのどちらかを連想しても無理はない。 「汐留か……。氷川にも言ってみっか」  GPSが示す場所からは周の邸も近い。万が一に拉致だったとすれば彼の助力が必要になろう。時刻は夜の十時を回ったところだが、申し訳ないなどと言っている場合でもない。紫月はすぐに周に宛てて連絡を試みた。

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