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絞り椿となりて永遠に咲く41
「な、遼。これ咲いたらさ、押し花にしてもい? せっかく咲いてくれたのに……とも思うんだけどさ」
奇跡の一輪をどうしても残しておきたいんだ――!
紫月の気持ちを察した鐘崎も、二つ返事で押し花にすることに同意した。
「じゃあ、一緒に作るか」
「いいの?」
「もちろんだ。俺らが小学生の頃だったな。押し花の授業があって、おめえが作った紅椿の押し花を貰ったっけ」
それは大切に額に入れられて、今でも組の事務所に飾られている。
「あの時は本当に嬉しかったのを思い出す。おめえから貰ったこの押し花を一生大事にしようって思ったな」
「遼……」
「俺が作ったやつはおめえが貰ってくれたっけ」
「うん! パンジーのやつな。紫色でさ、俺ン名前の色じゃん! って思って嬉しかったなぁ」
それももちろん、紅椿の押し花の隣に飾ってある。幼い頃に贈り合った二つの押し花は、大人になった今、再び肩を並べて共にあるのだ。
「あのパンジー、紫の花びらの真ん中が黄色いやつだったな。黄色は月の色だろう? 紫と月で」
「あ……! 俺ン名前」
「そうだ。だからあの花で作ろうって決めたんだ」
あの頃からずっとお前のことが大好きだったから――。
「遼……」
あの時、俺は単に道場の庭に咲いてた紅椿の花を押し花の材料に選んだだけだったけど――。
「おめえはその紅椿をこの肩に背負ってくれたのな」
そっと――肩に触れ、刺青の紅椿を撫でる。シャツ越しの肌は温かくて、微かに伝わってくる心臓の音にも今この瞬間の生を実感させられる。万感の思いに安堵する表情を浮かべた紫月の――その添えられた手を包み込むように握り返して鐘崎は瞳を細めた。
「生きてるんだな、俺たち――」
「遼……」
「お前のお陰だ。お前が捜してくれたから――」
お前が俺を見つけてくれたから、今こうして互いの温もりを感じ合えるんだ。
「確かめ合うか」
「ん、うん――!」
互いの肩に咲いた紅椿と白椿を重ね合い、生きていることを確かめ合おう。
好きだとか惚れたとか、愛しているとか――そんな気持ちすら遥かに超えて、ただ互いが互いの目の前に在ることを噛み締め合おう。
「遼、俺……俺さ」
「ん――? なんだ?」
「俺、死ぬ時はおめえと一緒がいい」
「紫月――」
「今回……もしもおめえがあのまま……爆破に巻き込まれてたらって考えたら……俺、俺……」
腕の中の肩が小刻みに震えている振動が、絶対に離れたくはないと云っているようだ。
今回の事件がどれほど彼の心に衝撃を与えたのかが手に取るようだった。無事に助かった今、安堵感と共に恐怖もまた、じわじわと心を苛み出してはきっとこの先も彼を苦しめ続けていくのだろう。
そんな思いを払拭してやるかのように鐘崎は愛しい者を抱き締めた。渾身の想いを込めて抱き締めた。
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