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絞り椿となりて永遠に咲く42

「大丈夫だ。おめえを独りになんか絶対にしねえ。俺が死ぬ時はおめえも一緒に連れて逝く――」  本来ならば決して口にはしないだろう言葉だった。例えば二人が同時に窮地にあったとするならば、身を挺しても紫月のことだけは助けよう、生かそうとするだろう。  紫月もまた、本能では同じことを感じているだろうし、実際にそんな状況下になれば自分はどうなっても構わない、互いに相手を護らんとするだろう。  だが、今の彼が望んでいるのはそんな言葉ではないのだろう。例え話で構わない、生も死も共にあらんと伝え合うことが何よりなのだ。 「遼、ホントな? 約束だぜ?」 「ああ、約束する」 「ん、うん、そんなら良かった……」 「安心したか?」 「うん……!」  普段は天真爛漫、太陽の如く明るい彼が、まるで産まれたての仔猫のように肩を丸めてすがってくるのが愛しくて切なくて、堪らない思いにさせられる。 「約束する紫月。俺はおめえを残して逝くようなことはしねえ。だから安心して側に居てくれ」  安心して、いつも俺を照らす太陽でいてくれ――。 「約束だかんな……。生きてる今も、死ぬ時も、ぜってえ一緒だって。ぜってえ離れねえって」 「ああ。誓う――」  そっか。良かった――。まるでそう言うように頬を伝った一筋の涙を指で拭ってやった。それを愛しげにペロリと舐めて、 「うん、しょっぺえな」  フ――っといたずらそうに笑ってやると、ようやくと腕の中の瞳にいつもの笑顔が戻ってきた。 「バッカ、遼……」 「そう、その笑顔だ。おめえはそうでなきゃ――な?」 「あっは! ん、そだな」  ガラにもなくナーバスになってしまったことを照れ臭そうにして紫月は笑った。そして、どちらからともなく互いの額と額をぶつけ合う。コツリと合わせたまま、視界に入りきらないほど側に居られる感覚を噛み締め合う。 「紫月、すまんがその……」  そろそろ猛獣モードなんだが――。  言葉の代わりにクイと押し付けられた身体のど真ん中が硬く熱を帯びているのに、紫月はキョトンと瞳を見開き、 「あっは! ホントだ。超猛獣モードんなってる!」  クスクスと笑うと同時に、逞しく張った紅椿の肩に両腕を回して抱きついた。そして自ら唇を重ねれば、すかさずグイと大きな掌で頭ごと引き寄せられて逸ったように濃い口づけを見舞われた。  熱い吐息と濡れたキスの音、色香を伴ったとろける視線が欲情の度合いを突きつけてくる――。 「部屋、行くべ」 「ああ……頼む」  半ば前のめりに腰を折っては少々辛そうに苦笑してみせる亭主の姿がコミカルで、今さっきまでの切ない感情が一気に吹き飛ぶような気分にさせられる。 「おし! 頼まれよう!」  背中に手を回して腰をさすってやりながら、紫月は朗らかに微笑った。

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