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一太と初めての思い出作り
遼は一発でスイカを仕留めた。
「よっしゃー!ほら、見てみ」
ガッツポーズをする遼。
「遼、二歳児相手に大人げないぞ。困ったおじちゃんだな」
「うん」
一太はいたってマイペース。
何度もチャレンジし、三回目でようやくスイカを割ることが出来た。
「パパ、やったーー!!」
そぉーとはちまきを取りスイカが真っぷたつに割れていることを確認した一太はぴょんぴょんと跳び跳ねてそりゃあもう大喜びだった。
「ママ、みて!はなしゃん、みて!」
キャキャとはしゃぎ、嬉しそうに顔を輝かせて息を弾ませた。
「遼成さんいい加減にしてください!」
橘は遼にビンタを食らわせようとしたが、がしっと手首を掴まれ阻止された。
「そう睨むなよ。可愛くないぞ」
「あなたには言われたくありません」
ぷいっとそっぽを向くと、遼の手を払いのけようとしたが、橘の反応を楽しんでいた遼は決して離そうとはしなかった。
それを見ていた一太。遼につかつかと近付くと、
「あっぷ、めっ!」
睨み付けた。
「一太坊っちゃん」
「あ、あの……」
まわりにいた舎弟たちの顔からさぁーっと一斉に血の気が引いた。
相手は泣く子も黙る縣一家の若頭だ。無理もない。
「未知さん行く必要はない」
一太を助けに行こうとした未知を根岸が止めた。
遼はくくくと愉しげに笑いながらしゃがみこみ片膝を立てた。
「なかなかいい面構えだ。目付きがいい」
顔を覗き込み頭を撫でた。
「一太はパパが好きか?」
「うん!」
一太は笑顔で即答すると、このくらい好きと言わんばかりに両手を大きく広げた。
「そうか」
遼も嬉しそうだったが、俺も遼に負けないくらい嬉しかった。
思わぬ邪魔がひとり入ったが、一太との初めての思い出作りは大成功なうちに無事に幕を閉じた。
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