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一太とはじめての思い出作り

スイカを思いっきり叩いた。つもりだったが、 「あれれ?」 一太が不思議そうに首を傾げた。 「びくともしないな。もう一回、叩いてみるか?」 「うん」 一太の手を取り、棒を握り直そうとしたら、 「下手くそだな」 黒塗りの車が路肩に停車し、笑いながら遼が颯爽と下りてきた。 「ほら、貸してみろ」 余裕綽々の遼にハチマキと棒を渡した。 威張っていられるのはいまのうちだ。 遼はニヤリと笑うとなぜか未知のところに向かった。 「奥様に言い付けますよ。浮気をしていると。それでもいいですか?」 橘が未知の前に立ち両手を広げた。 「ちょっと借りるだけだ。減るものじゃないし、少しくらいいいだろう?」 「駄目です。お触り禁止です。貸し出し禁止です」 「そう固いことをいうな」 互いに一歩も引かない二人。 遼、そのくらいで止めとけ。口で橘に敵うヤツはいない。 「それじゃあ、橘。お前で我慢する」 「へ?」 がしっと橘の手首を掴む遼。 その隙に遼の弾よけの男らが橘の目にハチマチを巻いた。

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