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一太とはじめての思い出作り
あともうちょっと。というところで石に躓き一太が転んだ。
「大丈夫か?」
脇の下に手を差し入れ、すぐに抱き上げた。肱と膝頭が擦れて血が滲んでいたが一太は泣かなかった。はちまちを取ろうとしたら、はちまちを手で押さえ首を横に振った。
「しゅいか。バン」
「そうか、スイカ、バンして、みんなで食べたいよな?」
「うん。あと、ママ」
「ママも待ってるしな。よし、分かった」
一太を静かに下に下ろした。
「泣かなくて偉いぞ」
頭を撫でてやると、笑顔で大きく頷いた。
「さすがはカシラの坊っちゃんです」
「一太くん偉いぞ!」
「止せや、照れるじゃねぇか。なぁ、一太」
「パパ、バン」
一瞬、聞き間違えじゃないか耳を疑った。
「嬉しいじゃねぇか、パパって呼んでくれるのか?」
「うん。おじちゃん、いちたのパパ」
やべ、涙が出てきた。
こうなったら一発で仕留めてやる。一太の手を握り、棒を振りかざした。
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