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一太と初めての思い出つくり
「まずは目を隠そうな」
しゃがみこみ一太に必勝と書かれたハチマキを巻こうとしたら、邪魔して外そうとした。
「かからしいんだべ」
「かからしい?」
「気になって煩わしいって意味だ」
「なるほどな」
根岸は福島にある菱沼組と親交が深い。組長の度会さんと若頭の弓削と懇意にしている。弓削は若いのにかなり訛っているらしく、たまにぽろっと福島弁が出る。
一太のご機嫌を取りつつ、根岸と二人がかりでなんとかハチマキを巻いて目を隠した。
「一太、そのまま真っ直ぐだ」
一太の後ろに立ち、丸い木の棒を二人で握り、ゆっくり、ゆっくり、一歩ずつ進んだ。
声が出ない未知は手を叩き、ここだよって一太に教えていた。その笑顔がまた可愛くて。心臓がヤベェーくらいにどきどきしてきた。
「カシラ、鼻の下が伸びているぞ」
「う、うるさい」
大股で蟹さんみたいな歩きかた。結構腰に来る。ぎっくり腰になりそうだ。でも可愛い一太のためだ。ここで男を見せなきゃ示しが付かない。
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