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ぎゅっと強く握り返したその手を、どちらともなく手放した。 そして、新たなる旅路へ歩を進めるのだったーー。 最後のページを捲り、ついに裏表紙が現れた。 あぁ、終わってしまった そう独り思い耽っていた時、耳に届いた音色。 キーンコーンカーンコーン 「!?ーーやべっ!!!」 学校の校舎から大分離れた場所のベンチで寛いでいた俺は、今日一番最初のチャイムを耳にして慌てて近くに置いていた鞄を抱えて走り出した。 ∞ 昇降口に駆け込んだ俺は、自分のロッカーから上履きを取り出し外履きを乱雑に仕舞っては乱暴にロッカーを閉めると、廊下を走る。 階段を昇っているところで2回目のチャイムが鳴る。これは朝のHRが終了した合図。やべぇ完全遅刻扱いだなコレ。 息を切らしながら階段を昇りきり2階に到着。少しの廊下を走って、目的の教室の扉に手を伸ばす。 ガラッー 「ぁ、来た!」 「ぁおはよー成崎」 「成崎だぁおはよー!」 「……ゼェ……ハァ……ゲホッ……おはよ……」 成崎、そう呼ばれた俺、成崎 優(なりさき すぐる)は席まで行くと鞄を机に放り投げて脇腹を押さえて呼吸を整える。皆が皆、そんな俺をやんわりとした笑いの空気で見ている。 「何?どっから走ってきたの?まさか寮?」 「いや……ハァ……ハァ……」 「おせーよ委員長ー!」 「ごめ、……ん?何、……ハァ……なんか用?」 委員長、そう呼ばれたのも俺のこと。学級委員長、なんてのも俺の役割だからだ。 普段は名前を呼ばれるが、委員長と呼ばれたときは大抵何かしらの仕事があるときだ。俺はそう声をかけてきたクラスメイトに視線を向ける。 すると、周囲に集まっていたクラスメイトたちは通り道でも作るように場所を避けた。そしてそこを通されるひとりの生徒。 「……ん……?」 「あはは、今日からクラスメイト増えたんだよ~」 「転校生だよ委員長」 目の前に立つ背の高い男。ぁ、いや、ここは全寮制の男子校だ。男子しかいない。右を見ても左を見ても、学校中どこを見ても野郎しかいない。なんという悲劇だ。 ……まぁそんなことはさておき、目の前の男は身長180cmは余裕であるだろう高身長で、目は切れ長で睫毛も長い。鼻はシュッとしてて唇は薄桃色の整った形をしている。優しげな眼差しに、誰もが見とれる微笑み。 男が男の容姿を事細かに確認するなんて、とてつもなく悲しい現実。でもそれは俺にとってとても重要なことではあるので仕方ない。 結論、上の上。勝ち組。上位種。美形。イケメン。……あとどんな言葉あるの。 「今日からこのクラスで一緒になる、藏元 玲麻(くらもと れいま)です。」 「……ぁ、はい。俺は成崎 優……、て聞いてるか。」 「うん、さっき、皆が教えてくれた。学級委員長だって」 にこり、笑う藏元に周囲の男子がうっとりしてる。男相手に、男が、釘付けになってる。……理解不能。 「ごめん。でー……朝のHRで、担任から俺宛てになんかあったよね?」 「あぁうん、先生が、」 「学校案内とかここでの過ごし方とか、学級委員長から藏元くんに教えてあげてって」 何故か藏元の隣の生徒が俺に伝えてくる。藏元は口を開いていたので、別に代弁しなくてもよかった気もするが。 「あぁ了解。じゃあ校内案内は今日の昼休みでもいい?」 「うん。ありがとう」 「あーそれと、なんて呼べばいい?」 「任せるよ」 「……じゃあ藏元」 「うん、よろしく成崎」 片手を上げて爽やかに微笑んだイケメンは、既に虜になっている数人の生徒を引き連れて自分の席に戻っていった。 ……やれやれ、面倒くさい人種がやってきたぞ。 自分の席に座りながら、俺が密かにそう思ったことは誰にも秘密だ。

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