6 / 321
6
放課後、懲りずに藏元に近づく生徒数人。
それをうまく振り切って藏元は俺のもとまでやって来た。
「お待たせ、成崎」
「んー。じゃあ行こうか」
朝から驚きの連続で疲れているであろう藏元を、一刻も早く寮の自室へ戻してやりたいが、ちゃんとこんな人もいるぞと示しておかなくては。
やって来たのは3階。
3年の教室がある階だ。しかし、どこかの教室に入るわけでもなく廊下の、広い踊り場で止まった。
「成崎?」
「ん?」
「ここで何かあるの?」
「なんもない」
「?じゃあ、案内って……?」
「ちょっと待ってて。15分以内ではあると思うんだけど」
腕時計を見てざっくりと時間を告げる俺に、藏元は首を傾げる。
それから7、8分後。
ヒソヒソと周囲の生徒たちは藏元を見て喋っている。それに居たたまれなくなった藏元は外の景色や掲示物を見ていた。
そんななか、漸くといってはなんだけど、控えめの歓声が上がった。
教室から顔を出す生徒、廊下の端に立ってそれを見守る生徒。そこにいる生徒たち全員がその人に熱視線を送っている。
そして、その視線の先、教室から出てきたのは、またまたイケメン様。
高い身長、黒髪、整った顔に微笑みはない。
ただ、友人と思われる生徒には笑って挨拶している。それ以外には興味がないとでもいうように、黄色い歓声には完全無視を決め込んでいる。
そんな光景を、大勢のファンから離れたところで見ていた俺たち。特にこれといった表情もなくその光景を見ている藏元に、俺は言葉を添えた。
「あんな応え方もあるよ」
「……あー……無いことにするってこと?」
「それもだし、認識した上で無関係です、みたいな」
「そっか…………」
少し参考になったのか、微笑みが戻った藏元に俺も小さく笑い返す。
そんな俺たちの前を、3年の黒髪イケメンが通りすぎた。
一瞬、イケメンが俺を見た。
「………………」
なんかそれ、自意識過剰発言っぽくねぇ?
アイドルが私に向かって手を振ってくれたの!みたいな……
いやいや違うから。正真正銘、見られたから。事実のみだから。俺に色眼鏡はございません。つかそんな眼鏡、買った覚えすらないよ。
「ん?何?」
「ぁいや、何でもない。じゃあ……寮行こうか」
「うんよろしく。あ、ねえ」
「んー?」
昇降口に向かうべく階段を1段降りた俺は、藏元の呼び掛けで振り返り少し上を向いた。
「今の3年生、何て人?」
「宮代 継 さん。生徒会長だよ」
ともだちにシェアしよう!