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寮に戻って、管理人から藏元のルームキーを受け取る。
基本二人部屋で部屋にはキッチンと風呂、トイレが備わっている。1階には管理人室、談話室、食堂、小型スーパー、大浴場があることを伝える。
「大浴場かぁ。なんか修学旅行みたいだね」
「最初は思ったけど、学校事情を知ったらもう行かなくなった」
「ぁ……」
「あっ、違う!俺はって話で藏元は好きにすれば」
「ううん、俺ものんけ、だから」
今日初めて聞いたであろう単語を使って、ははっと笑った。
……まぁ、ノンケなら行きたがらないよな。
エレベーターホールに向かって、歩きながら俺は説明を続ける。
「2階が1年、3階が2年、4階が3年の部屋。5階は近づかないほうが身のためだよ。生徒会とか委員会委員長の部屋だから。」
エレベーターに乗り込み、3階へと昇る。隣に立つイケメンはちょっと疲労の色を覗かせている。
そりゃそうだ。今まで住んでた世界とはまるで違う価値観に出会ったのだから。
「なんか……ありがとう成崎」
「ん?」
「最初話聞いたときは正直、やっていけない気持ちの方が強かったけど……生徒会長の姿見てどうにかなるかも、て思えたよ」
流石生徒会長。藏元は見た目愛想振り撒きそうだけど、どっちかというと生徒会長みたいな周りは気にしないスタイルの方があってるのかもな。
「それと、成崎が居てくれて良かったよ」
「そー。それは……役に立ててよかった」
チーン、とエレベーターが目的の階到着のベルを鳴らす。扉が開き、俺は藏元を部屋の前まで送る。
「荷物はもう部屋の中に届いてるはずだけど、」
「うん。朝届いてるって聞いたよ」
「でも、今日は想像以上に疲れてると思うから早く休めよ」
「あぁ、ありがとう。……同室者って誰だろう。緊張する」
「クラスメイトの誰かだから心配すんな。」
「そうなんだ。成崎は、誰と一緒なの?」
「今のところ、俺は一人」
「ぇそうなの?」
「んー。前までいたんだけど、3月で転校して今は一人」
「なんだー。成崎と一緒がよかったな……」
「最初はみんな俺が案内するからそう言ってくれるんだけど、同室者と仲良くなればすぐ慣れるから」
「そうかなー……」
「……ぁ、寮の、1階の食堂、あそこは朝5時半から7時半までやってるから、もし部屋で自炊しないなら明日の朝、朝食はそこで取れよ。学校は8時半までに登校すること。遅刻気を付けろよ」
「ふふ、今朝、俺がHRで挨拶したとき居なかったくせに」
藏元に笑われて、げっと顔をしかめた。嫌なところついてくるな。
「寝坊したの?」
「うんまぁ、そんな感じ。……俺みたいに、遅刻すんなよ」
「あはは、開き直ったし。了解」
「じゃあ、あとは同室者に聞けよ。多分もう帰ってきてると思うから」
腕時計を確認するともう6時を過ぎていた。俺の案内の役目はもう終了したと思い、役目の仕上げにかかる。
じゃあおやすみ、そう言って去ろうとしたとき、成崎、と呼ばれた。
「んー?」
「連絡先、交換してくれない?」
あー今回は来ないと思ったんだけどな。まぁ心細いのは初日なら誰でも普通か。
「んー、いいよ。でも俺基本連絡されても返せないよ?返せるとしたら夜の10時から11時くらいかなー」
「忙しいんだ?」
「んーまぁ、そんな感じ」
「うん、分かった。ありがとう成崎」
「んー、じゃあおやすみ藏元」
交換し終え、今度こそ藏元と別れた。
今日1日が終わった。
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