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何故エルドラはそんな事を口走ったのか、ゾニエは信じられず霧の深い山奥、エルドラの消えた森へ足を踏み入れたのだ。
この文章で第3章が終わる。
俺だって気になる。
あんなに仲間思いで信頼できるエルドラがどうして?…………知りたい。仲間をおいて、山奥で何をしている?何が待ち受けている?
とっても知りたくて、第4章へと続くそのページを捲りたい。捲りたいのだが……
腕時計は8時19分を示している。そろそろ動き出さないとまた昨日の二の舞だ。
やむを得ず本を閉じた俺はいつもの休息場所のベンチから腰を上げ、傍に置いておいた鞄を肩に掛けると漸く校舎に向かって歩き出した。
8時29分。1分前、完璧だ。そう自分を誉めつつ教室の扉を開ければ、クラスメイトたちから挨拶を送られる。
なんだかHRを始める教師気分だ。
「おはよう成崎ー、ねぇねぇ昨日先輩がねぇ!」
「んー、どうしたの嬉しそうな顔しちゃって」
席に着くと、前の席の生徒が振り返り“幸せです”を顔に張り付けて自分の報告をしてくる。
彼氏がどうした、先輩後輩がどうした、恋の悩み、恋敵の愚痴、クラスメイトたちはそんな話を俺にしてくる。
何故かって?俺がノンケだから。ノンケならば、例えどんな話を聞いたとしても所詮は蚊帳の外なのだ。
ただ、誤解しないで欲しい。俺はそれでいいと思ってるし、それを望んでる。仲間外れ、ではなく、自ら外されている。
だから、話を聞くだけで済むならばいくらだって話を聞く。
「へぇよかったね。で、どうすんの?」
「んーでもね、高橋先輩が僕にねー」
会話の最中、チャイムが鳴って先生が入ってきた。
皆が席に戻っていくそのなか、取り巻きがいなくなって見えた藏元の姿。その視線がこちらを向いていたことに気が付いた。
多分、10秒くらいずっと見られてた。何?どうかした?あの微笑みはどこ行ったの?
そして、ふっと反らされた視線はそのまま前を向いた。
………………?
「───成崎!!」
「ぇ、あ、はい?」
藏元のせいで意識をトリップさせていた俺は担任に大声で呼ばれていたことに気が付いた。みんなが笑っている。
「成崎、お前なんで昨日遅刻した?職員室にも報告しに来ないし……先生、成崎が自分から来るの待ってたのに」
……そんな、四十のおっさんに「ねぇ遅いぃ!私ずっと待ってたのにぃ!」的な事言われてもトキめかねぇし。つかキモいし。鳥肌立ったわ。ブツブツだわ。
「あー…………寝坊しました。それと、転校生の案内を優先しました」
「あぁだよなーイケメン来たもんなー優先するよなー……てアホ!先生優先だろうが!昼休み、職員室に来い」
「えー?!それは変でしょズッキー。だって遅刻扱いな上に罰則って」
「おいおいおい、成崎。バカ言うんじゃねぇよ。お前にはたくさんの奴らの恋の相談窓口になってもらってんだ。」
誰がみどりの窓口だ。……いや、だったらピンクか。
「昨日のは遅刻扱いになってねぇよ」
「えマジすか」
「マジっす」
「やっべ、ズッキー……俺ズッキーのクラスで本当幸せ」
「だろ?」
ウィンクと投げキッスをされる。うわわ、気持ち悪い。でも感謝だよ鈴木先生。
そんなやり取りを皆がケラケラ笑いながら見ていた。……藏元以外の皆が。
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