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「この3種類のプリント、1組にしてクラスに配布しといて」 コーヒーの香り漂う職員室。 面倒事はさっさと片付けてしまおうと、4時限目終了とともにズッキーのもとへ行けば、大量のプリントの山を渡される。印刷されてから1度も触られてないらしいプリントの山は少しの折れも見当たらない。 「…………これ、1組にするまでは先生の仕事じゃないんすか」 「うん、そうなんだけどさー」 さらっと認めやがったな。 書類やらなんやらで汚れる机を漁っていた手を止め、ズッキーは俺だけに聞こえるよう口許に手を添えて囁いた。 「昨日は可愛いかったんだよー」 殴るぞ。 と苛ついた感情を素早く鎮火して、受け流すモードに切り替える。 いくら俺がノンケだからと言ったって、教師が生徒にそんな話しますかね?一応俺も男子高校生で、思春期で、回りの生徒と構造は同じ筈なんですけどね。 「いっつも先生には分かんないでしょーとか言って突き放すくせに昨日は、先生にも共有して欲しいとか言ってきちゃってさ」 「へー」 「最初は男だしガキだし相手にするだけめんどくせぇとか思ってたけど、やっぱ顔可愛いとそう見えてくるよなぁ」 「へー」 「やばいってのは分かってんだけど、やっぱハマっちゃうと抜け出せねぇもんだなー」 「へー」 ニマニマヘラヘラする担任。それを無表情で聞き流す俺。どんな絵図だよ。 奥さんだの恋人だの愛人だの、そんな人達と何しようがどうでもいいけど……独身四十の男が、迫られたからって男子高校生と付き合いますかね……?そもそもあんただって最初はノンケ…………まぁいいや。関係ない。俺には何も関係ない。受け取ったプリントさっさと持っていこう。 踵を返した俺は、くん、と肘を引っ張られた。持っていたプリントを落としそうになった。 「ときにあの転校生、タチとかネコとか、言ってた?あの顔いいよなー」 「…………知らねぇよ阿呆教師!!」 思いっきり振り払ったら盛大に椅子から転げ落ちたズッキー。様あ見ろ。 他の教師が笑い混じりに助けるなか、俺はそのまま職員室を出た。

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