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重い。せめて箱かなんかに入れてくれよ。
職員室を出たところで職員室前にある記入用テーブルに取り敢えずプリントを仮置きさせてもらい、俺は分けて運ぶか、一気に持っていってしまうか考えた。
幸い、教室は下の階だ。階段を昇るよりはまだ楽だろう。ただ、この量は1度に運ぶとぶちまける可能性もあるか。
そんなことを思案していると、突然右側に感じた気配。
「なりちゃんじゃーん!」
そしてそんな声とともに両腕でホールドされる俺。
げえぇ、面倒くさい人に捕まった。そうだったここ3階だった。最悪だどうしよう。
「なりちゃん!3階で何してるの?俺に会いに来たの?てことはいい加減抱かせてくれるの?なりちゃんの処ー……」
職員室前だぞ。職員室に来たに決まってるじゃん。なのになんでそんな発想に至るのこの人。思考も言動も行動もほんとワケわかんない。
出来る限りの抵抗をしながらどう逃げようか考えていると、引き離されていく東舘さん。
そしてもう一人、後ろから声が降ってきた。
「やめろ東舘。成崎がドン引きしてるだろ」
心を沈めるような、静かで低い声。東舘さんの甘い香水ではなく、爽やかな洗剤の香りが鼻を掠める。
振り返り見上げる。相も変わらず整ったその顔が、そこにあった。
生徒会長の、宮代さんだ。
「何か悩みごとか成崎。難しい顔してるぞ」
「ぇ、あーいや、悩みって程じゃ」
「俺らに話せないのー?……!!まさか誰かに掘られた!?」
「うるさいっす東舘さん違いますよ気持ち悪い」
「はは、こいつが気持ち悪いのはずっとだよ成崎」
俺の嫌悪感丸出しの言葉に、宮代さんが笑って返す。
ぁやべ、イケメンてマジ腹立つ。かっこいいなチクショー。
「で?このプリントの山、どうしたんだ?」
「あーほんと、大丈夫っす。運ぶだけなんで、すぐなんで。」
「運ぶの?教室に?」
「そう……ぁ、ちょ、ほんと、大丈夫なんで!宮代さん!東舘さん!」
なんて言ってる間に半分ずつ持ち上げた生徒会長と副会長は俺を置いて歩き出してしまう。
「大丈夫じゃないでしょー?こんな量をなりちゃんに持たせたら腕折れちゃうよぉ?」
「はぁ!?そんなひ弱じゃねぇっすよ!」
「俺も東舘もちょうど手が空いてるところだったから、成崎は気にするな」
「いや、あの……二人が良くてもファンが……」
周囲を埋め尽くすファンたちの視線が流石に痛い、怖い、無理。
いくらノンケで無関係の俺とはいえ、ここまでの嫉妬は恐ろしいのだ。
「俺の友達が、誰かに何かされるのか?」
宮代さんのその一言が嫉妬の空気を一瞬にして切り裂いた。
それは誤解を解く意味と、牽制の両方を持ち合わせていた。宮代さんの一言で周囲の睨むような視線が反らされ、歓声だけが残る。
俺の不安が取り除かれ、二人の後を追って俺も教室に向かう。
そして、扉を開けて……
いやまぁ、そうなるよね。
現れたのが生徒会長と副会長だったから悲鳴にも近い歓声が上がった。
「成崎、どこに置けばいい?」
「ぁ俺の、」
言い終わる前に二人は迷うことなく俺の机まで行ってプリントの山を置いた。
ピンク一色の教室のなか、俺は直ぐ様二人にお礼を言う。
「すみませんほんと……ありがとうございます、マジで助かりました」
「いいよ成崎」
「なりちゃん」
宮代さんはとてもいい人だから良しとして……ぁ、なんか凄く嫌な予感。
「このお礼は、今すぐにでも欲しいな」
そう言って顔を近づけてくる東舘さんだったが、襟を掴まれ後ろに引っ張られた。
「行くぞ東舘」
「ちょ、邪魔しないでよミヤー!俺のなりちゃんだぞーー!」
「じゃあな成崎」
「はい、あざっす」
暴れる東舘さんを回収して、宮代さんは美しい笑顔を俺に向けて出ていった。
教室を出る寸前、二人が藏元を見たのは気のせいだろうか。
………………はぁ。疲れた。
一息着こうと振り返れば、途端にクラスメイトたちの質問攻めを喰らう。
なんでなんでどうやって?
うん、そうだよね。イケメン大好きで面食いの彼らは絶対そうなるよね。
でもさ、取り敢えず、休ませてくれない?
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