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「藏元、ちょっといいか」
放課後、思えば昨日寮で別れてから今日初めて話した気がする。……まぁ、いい傾向だ。
席に座ったまま鞄に荷物を仕舞い、帰り支度をしていた藏元は俺の呼び掛けに顔をあげた。
「うん、何?」
「これから時間ある?」
「うん……大丈夫だよ?」
「小竹ぇ」
藏元にちゃんと時間があることを確認し、俺は教室の扉のすぐ外で待っていた生徒を呼び入れる。
黒縁メガネ、整えられた見た目、外見の印象から言ってしまえば、“理系”って言葉に尽きる。
「こいつ、C組の小竹」
「ぁ、えっと、俺はくら」
「知ってる。噂は届いてる」
ハッキリキッパリ言い切ってくる小竹に、少し戸惑いつつも藏元らしく微笑んだ。
「……そうなんだ…………成崎、えっと……?」
「こいつが、昨日話してたそっち方面詳しい人。」
「!!」
ぁ藏元の顔が変わった。でもビビった感じじゃないから大丈夫かな。どちらかと言うと、緊張と驚き?……見た目が理系くんですからね。想像できなかったよね多分。
「成崎の言う通り、藏元はヤバイかもな」
「だろー。ノンケの俺ですら、藏元に危機感感じたし」
「俺からすれば王道だが……」
「いやその王道?とかは知らないけど……」
何の事か分からず首を傾げていると、ガシッと肩を掴まれて、何かを切望するような眼差しを小竹は俺に向けてくる。
「お前が要なんだよ成崎。俺はお前が一番」
「俺はいいの。何期待してるか知らんけど俺はもう充分なのでぇ」
「勿体ない……」
ボソッと呟く小竹に、少し寒気を感じたのは気のせいにする。
「じゃあ小竹、お願いね」
「……おう」
「ぇ俺一人!?」
「俺もいたら恥ずかしくて聞けない事もあるかもじゃん?」
「な、成崎~!」
「頑張れ!」
無理にでも飛び込まなきゃいけない未知の世界を前に、藏元は弱々しい声を上げる。
が、俺にはこれ以外どうしてやることもできない。
普通なら羨むところなんだろうけど、今回ばかりはイケメンに生まれてきたお前が悪い。
なんて思いながら教室を後にした。
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