37 / 321

37

放課後、クラスマッチの準備を6時過ぎに終えた俺は、帰り支度をしていた。 ちなみに明日は、交代要員に加えて、学級委員長なのでイベントにはしゃぐクラスメイトの校則違反の取り締まりや、怪我人や病人がいないかの見回りも役割としてある。校則違反の取り締まりなんて風紀委員会がやってくれればいいじゃないか、とも思うけど彼らはもっと面倒な輩を相手にしているので仕方無い。 「やっと終わったぁ……」 「手伝って思ったけど……、全種目の交代要員、校則違反の取り締まり、怪我人の見回り、担任との連絡係、生徒会との連絡係…………て、やっぱり成崎、仕事持ちすぎじゃない?」 俺の明日の役割準備を手伝ってくれた藏元が、一通り読み上げて怪訝な顔をした。 俺の掛け持っている係を見ると、みんなが同じ事を言う。確かに大変ではあるけど、ちゃんと理由もあるんだ。 「…………藏元には話してもいいよ」 「?」 「俺が無駄に忙しい理由」 「無駄ではないけど………なんで?」 「暇な時間を作らないため」 「うん……?暇が……嫌なの?」 「…………まぁそんなとこ」 「分かったようで……分からないようで……」 首を傾げて困惑する藏元に、帰るぞと促して席を立つ。教室の電気を消して、廊下に出れば日中とは全く違う静かな空気だった。 「明日は、極力俺も手伝うよ」 「いいって。取り敢えず藏元は、サッカーに出場することになってんだから。そこに集中しとけって」 「俺も交代要員メインで良かったのに……」 「……そういや、今日の昼休み、東舘さんは結局何がしたかったんだろうな?あのままバスケしないでいなくなったし」 「……あれは牽制だと思うよ」 「牽制?……2年B組に?」 「…………なんてね」 爽やかに笑った藏元が、俺には違和感だった。また、何かを誤魔化された気がする。 「…………藏元さ、なんかこの頃─」 「あーー!成崎ー!!」 静寂の校内、ふたりだけだと思っていたら突如背後から大声が聞こえてきて、振り向いたと同時に突っ込んできた人に押されよろめいた。 それが誰かも分からないまま、無理矢理に肩を組まされる。 「は……???」 「いやぁあもう帰ったかと思ってたんだ!こんな時間に会えるなんて、ついてるな!俺!」 「……ぁ、髙橋……!」 「おぅ!ちょうど成崎に話があってさ!」 にこにこと人懐っこい笑顔で俺と肩を組む髙橋に、藏元はこいつは誰だと視界の情報を集めている。 「あー、髙橋、紹介するよ。最近転校してきた藏元 玲麻。で、こっちが生徒会会計の、髙橋 久道(たかはし ひさみち)。」 「ぁ、生徒会の人なんだ。よろしく、藏元です」 「あー!お前が噂の!よろしくぅ!確かにかっこいいね!目とか、綺麗な色してんな!」 藏元に求められた握手を髙橋は両手でぎゅっと握り返してはブンブンと振る。それに付け加えて、思ったことを正直に誉めている。 これが、髙橋式コミュニケーションだ。 「あれー?でも、藏元さぁ、俺と何処かで会ってる?」 「え?……藏元と?」 髙橋の言葉に少なからず興味を抱く俺は、髙橋にすぐに聞き返す。藏元は微笑んだままだ。

ともだちにシェアしよう!