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「ぁ!あの時のイケメンくん……藏元くん、だっけ……違う?」 「あってます」 近くまで来た東舘さんは藏元を見て、少し首を曲げながら話しかける。藏元に興味が湧いたのか、それ以外か。 藏元に対して、東舘さんがどう反応するのか、俺は少し怖かった。 「……なんか、なりちゃんと近くない?」 「……あぁ、バスケ教えてたので。」 「……その距離で?」 「成崎が、バスケが苦手だって言うので姿勢から入ることにしたんです」 「……ふーん…………」 藏元は東舘さん相手に全く動じてない。それが余計、東舘さんの笑みを誘った。 「藏元くん、バスケ得意なの?」 「好きですよ」 「クラスマッチ、出るの?」 「それは分からないです」 「なんで?」 「俺基本、交代要員なので」 「交代?……それ、なりちゃんが去年やってたやつでしょ」 「今回から俺もです」 「……なりちゃん」 ずっと藏元に向いていた東舘さんの笑顔が俺に向く。 あーいやだ。今度はなんだよ東舘さん。何を考えてるのか、相変わらず読めない。千田、やっぱりこの人読めないよ。 「藏元くんと仲いいんだ?」 「はい」 即答した。それが全員の予想を裏切ったらしく、一斉に視線が集まる。藏元ですら、驚いている。 「へぇ……なりちゃんがそんな反応するなんて、藏元くん、特別なんだね」 「……俺も、成崎と仲いいと思ってます」 「何それ、両思いじゃん。……妬いちゃうなぁ。まさかなりちゃん、恋人とか言わないよね?」 「友達っすよ。……つか、東舘さんは何しに来たんすか」 「んー?俺ぇ?俺はねぇ、バスケしに来たんだけど……」 笑ってるくせに、目の奥が笑っていない。目の光が冷たい。東舘さんはポケットに入れていた手を出して、藏元の肩に手を置くと意味ありげに囁いた。 「今日はやめるよ。明日のクラスマッチ、期待してるね」

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