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数日後。
クラスマッチが明日に迫った今日、昼休みを削って練習をするのも最後の日。
俺は藏元と、クラスメイト数人と、バスケットボールを練習していた。どれに交代出場させられるか分かったものじゃないので、野球、サッカー、バレー、大縄跳び、リレー等々スポーツは全部練習してきた。そして、最終日がバスケットボール。
正直、これだけは避けていた。
あわよくば、練習から逃げたいとすら思っていた。
「成崎!パス!」
「っーーー!!!」
回ってきたボールをドリブルして、走り出そうと1歩踏み出す。と同時に、ドリブルしたボールが足に当たって明後日の方向へ飛んでいった。
「………………」
「………………」
「………………」
「……成崎、もしかして」
「そうだよ!バスケ滅茶苦茶苦手だよ!!!不得意中の不得意だよ!!」
藏元が、眉尻を下げて笑う。他のみんなもやばいじゃーんなんて危機感なく笑ってる。
でも、お前らのその余裕の笑いを奪える自信があるほど、俺はバスケでは超ポンコツなんだ。さぁ、思い知るがいい。
「他の競技には交代で出るからさ、バスケだけはまじで別の人が出て?ほんと!お願い!」
「大丈夫だよ成崎。一緒に練習しよ?」
「藏元……全然分かってないよ俺のレベル!今日の練習でどうこう出来るレベルじゃないんだって!!」
「サッカーも野球も、他のスポーツはそつなくこなしてたじゃん。大丈夫、出来るようになるから」
「人には向き不向きがあるだろ!?」
「はい、じゃあまず、姿勢から!」
うわうわうわ。出たよ頑固藏元!人の話聞かないよこの子!もう鬼にしか見えないよ!微笑んでんじゃねぇ!苦しんでるところ見て楽しんでんのか!?
「足を肩幅に開いて、」
「うわ、ちょ、待って」
「腰落として、」
「藏元、おい、」
「背筋伸ばす!」
「いてっ!」
肩とか腰を押さえられ強制的にその姿勢に持っていかれる。そして最後に背中を叩かれた。真後ろにいる藏元に、抗議の声を上げる。
「最後!叩く意味あったのか!?」
「……気合い入れも込めて?」
「納得できるか!つか、人の話を聞けよ!俺は出来ないって」
「成崎はコツ掴むの早いから、基礎があればすぐ出来るようになると思うんだ」
「……そ、そんな手には乗らな」
「なーにしてるのぉ?」
俺が藏元と言い争っていると、体育館に間延びした声が響いた。
声の出所へ、体育館にいた皆が視線を向ける。きゃーきゃーと盛り上がる出入り口から、背の高い人影が現れた。
「……ふふ、クラスマッチの練習?」
「……東舘さん」
「俺バスケ得意だよ?言ってくれれば手伝ったのに」
「遠慮しときます。つーか、クラスマッチっすよ。敵に教えてどうすんすか」
「敵?やだなー。俺の可愛いなりちゃんを、俺のクラスの奴は誰も敵だなんて思ってないよ。むしろ、困ってるときは助けてあげたい。……勿論、お礼は頂戴ね」
「本当キモいんでやめてください」
近づいてくる東舘さんを呆れた目で見る。
確かにこの人は、昼休みはほとんど体育館でバスケしてるし、上手いんだろうけど……その差し伸べられた手を取ったら、後が恐ろしい。
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