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事情聴取が一通り終わり、俺たちは漸く解放された。
関わりたくないNo.1に会ってしまい、話す気の無かったことを話すことになってしまい、かなり濃いメンバーとかなり濃厚な時間を過ごし、生徒会室を出た今、疲労感が半端無い。
もう今日は何もしたくない。帰って寝たい。今何時だ?
「成崎、大丈夫?」
「すっごい……疲れたぁ」
重いと感じた肩を解しながらため息混じりに呟く。藏元はいつもスマートにやり過ごすから今回も大した疲労はないんだと思ってた。
けど藏元も、首を回して凝った肩を解すような仕草をした。
「緊張感凄かったね」
「……へぇ」
「何?」
「藏元も、緊張したんだ」
「あはは……あのふたりの圧は流石に……凄いと思ったよ」
「風紀委員長様、ほんとヤバイよな……存在が」
「……名前呼びじゃなくていいの?」
藏元のちょっと意地悪な一言に、半笑いの表情のまま固まった。
「…………ハハハー嫌ですよぉ藏元さぁん。いないところでは勘弁してくだせぇよぉ」
「風紀委員長は嫌々なんだ?」
「当たり前じゃないですかぁそこ疑われるって心外ですねぇ」
藏元は爽やかに微笑んでいるんだけど、妙に刺を感じるのは俺だけか?
「じゃあ生徒会長とは?」
「…………はい?」
「生徒会長と呼び会うのは、そこまで嫌だと思ってない?」
「…………あの……あれは宮代さんのお願いというか……思い付きの提案だと思うので、そこまで深い思いはないと思うんですよねぇ」
「そうなの?」
「だからいつか飽きると思うし、それまで聞き流してほしいといいますかぁ」
あの方々を下の名前で呼ぶなんて、やっぱり違和感あるよね。俺だって未だに困惑してますよ。
「……じゃあ、成崎にとっても、深い意味は無いんだ?」
……呼ぶことに抵抗はあるけども……呼ぶ意味は……
「無い……と思ってる……けど」
「…………」
廊下を進みながら、首を傾げて横の藏元を見上げる。
「…………」
「ぁ、親近感?……て、……確か……」
宮代さんとそんなこと話した気がする。
「…………親近感、ね」
「……な、何……なんだよ?」
優しく微笑んでるだけの藏元が、逆に怖い。名前呼びに関して、何か思うところでもあるのか?
「…………呼んでくれる?」
「……ん?」
「俺の名前、呼んで?」
「…………え?」
なんでそうなる。
動揺を隠すように歩みは止めず、聞こえているのに聞き返してしまった。
「……駄目?」
「……いや……あの……なんで?」
「……だって、意味はないんでしょ?」
「うん……特にはない、と思ってる……けど」
「じゃあ、呼んでみて?」
「…………」
いやぁそれはさぁ……宮代さんと風紀委員長様を名前で呼ぶのと、藏元を名前で呼ぶのは俺にとって全然違うんだよ……。
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