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【1】穏やかな始まり……⑧
体温が上がる。
服を脱がされる、ただそれだけの行為に深い愛情を感じる。身に着けた布を一枚取ることでさえ伊武から施されたら甘い愛撫なのだ。
「先生の耳、外側は冷たいのに、内側は熱いな。形が綺麗でずっと舐めていたくなる」
言葉と吐息と舌で責められる。
もう訳が分からない。真っ直ぐ立っていられない。
不意に伊武が笑う声が聞こえた。
「可愛いな。自分でつかんだのか?」
気がつくと勃起した自分のものを右手でぎゅっと握っていた。伊武の愛撫が気持ちよすぎて、快感で先走りそうな体を無意識のうちに止めようとしていたようだ。
「ほら、放すんだ。自分では駄目だ。俺が全部するから。先生にはさせない。触らせない」
「だって、これは……」
「先生を達かせるのも、感じさせるのも、全部俺だ」
「でも――」
「俺じゃないと駄目だ」
「そんな」
「今日からオナニーも禁止だ。一緒に暮らしたらそれも必要ないだろう」
自分の先走りで濡れた手を外される。お互いの指の間から艶めいたピンク色の亀頭が見えて、その卑猥さにドキリとする。
「全部俺がする。何もかもだ」
先生は俺のものだからなと、囁かれながら抱き上げられた。そのままリビングを出て寝室まで運ばれ、ベッドの上に寝かされる。体がシーツに心地よく沈んだ。
――あ……。
前髪を上げられておでこにキスされる。
じっと見つめられた。
「俺の手で達くか、俺のもので達くか、中に出されて泣きながら達くか、どれがいい?」
そんなのは選べない。
絶対に選べない。
だって、全部だから。
全部、何もかも伊武の言う通りだから。
覆いかぶさってくる伊武の首に腕を回して応える。
惣太ができるのはただ一つ。好きと言うことだけだ――。
「ファーストコール3 ~恋するヤクザのファミリー・アフェア~」
第一章 冒頭お試し読み(了)
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