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【1】穏やかな始まり……➆
「先生のほっぺは相変わらず柔らかいな。出来立てのすあまみたいだ」
伊武の頬はなめした革のような感触で心地いい。夕方になるとわずかに生えてくる髭の気配も好きだった。頬をくっつけているだけなのに幸せな気持ちになる。
「今日はどうしようか」
「……どうって」
「答えられないか?」
質問のようで質問ではない。伊武が楽しんでいるのが分かる。
「誰も見たことのない、俺だけが知っている顔を見たい」
「そんなのないですし……電気はちゃんと消します」
「どうしてだ?」
暗いと怖いだろう? と変な誘導をしてくる。
背後から腕を伸ばした伊武が、惣太のシャツのボタンに手を掛けてくる。よく見えないはずなのに凄く器用だ。甘い声で囁きながら次々とボタンを外していく。
「先生の体は綺麗だ。真っ白でさらさらで、どこも小さくて可愛い。全部、愛おしくてたまらない。ああ、ここを触ったら尖ってピンク色になるかな」
開いたシャツの隙間から手を滑り込まされる。すぐに乳首を見つけられて摘ままれた。指先で潰すように愛撫される。
「あっ……」
それだけで熱を持った乳首が甘く痺れて、快感がじわりと滲み出る。扱かれるたびに放射状の快楽が全身へ広がっていく。
どうしてだろうと思う。
伊武とはもう何度も体を重ねているのに、この行為に一つも慣れない。毎回、きちんと恥ずかしく、快感が増すたびに羞恥心も募っていく。
気持ちがよくて、恥ずかしくて、たまらない。
でも、こんなふうに触られただけですぐに欲しくなる。
――溺れてるのかな……。
どこまで行くんだろうと思い、どこまでも行ってしまうんだろうと思う。
歯止めの利かない自分が怖くてたまらないのに、気持ちよくて幸せで、ずっとこうしていたいと願ってしまう。心臓は走ってズキズキと痛むのに体はふわふわしている。
「先生……」
「……んっ」
耳のカーブに優しく口づけられて、好きだと囁かれる。そのままボトムを脱がされて、耳の穴に熱い舌を入れられながら内腿を優しく撫で上げられた。
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