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第61話
バイト先に着くといつも一緒に仕事してるパートのおばちゃんと店長にめちゃくちゃびっくりされてしまった
早々に医務室に連れて行かれ口元に湿布を貼られる始末……
スースーし過ぎて無駄に鼻が通っちまうよ
この顔で店内に出るのはちょっとマズいと言う事で、俺の今日の業務は裏方に回る事になった
ちょっとラッキー
でも、チビのくせに喧嘩するんじゃないっておばちゃんに怒られちゃった……
おばちゃんには俺と歳の近い息子がいるらしくて俺の事も色々気に掛けてくれるんだ。有り難い事だ
『お疲れ様でした』
「お疲れ様、もう喧嘩なんかするんじゃないよ!ほら、持って帰りな」
帰り際に大量の湿布を渡された
『こんなに沢山いいですって!前貰った湿布もまたあるんで大丈夫ですよ』
「いいから」
『はい……』
気が強い主婦には逆らえない、でもこの人も何だかんだ言いながら超優しいんだ
だけど、こんなに湿布あってもなぁ……
少し困惑してしまったが、まぁ体にも貼ればいいか
バイト先を出て帰り道歩きながら今日の晩飯は何にしようか考えていた。コンビニ弁当……何か久しぶりな気がするな
パックのジュースと唐揚げ弁当とお菓子を買ってアパートへ帰宅
今日も1日色々あり過ぎて疲れた……
口元の湿布を外し、さてお食事タイムだ
『……いたっ』
口の中の傷に滲みた
くうぅぅぅ、腹減ってるのにこれはキツい
さっさと食ってしまおう
『はぁ……』
何だか部屋の中がまた妙に静かに感じる
最近の俺は何か変だ
んー……
携帯を手に取り、画面を見てみると先輩から着信があった事に気が付いた。丁度コンビニ寄ってた時かな……
俺は折り返し朔夜先輩に電話を掛けた
『あ、先輩?ごめん今気付いた』
〈お疲れ様、もうバイトは終わったの?〉
『うん。帰って来て飯食ってたとこ』
〈そうなんだ。大丈夫だった?顔の怪我何か言われなかった?〉
『チビのくせに喧嘩するなってパートのおばちゃんに怒られちゃった。この顔じゃ店内に出れないから今日はずっと裏で雑用してたよ』
〈ふーん……でも休まずにちゃんと行くから憂は偉いよね〉
『そうかなぁ?』
〈うん、偉い偉い〉
何の変哲もない会話
だけどそれを楽しく感じてしまう
電話越しで聞く先輩の声はいつもより落ち着いていて優しく聞こえる
『今日もありがとう。あと急いでたとは言え先輩を置いてバイト行っちゃってごめん』
〈いいよ。新鮮で面白かったし〉
新鮮……何が新鮮なんだ?まぁ怒ってないみたいだしいっか
寝転びながらしばらく他愛のない話をしてたら、だんだん眠気を感じて来た
『ん……そろそろ風呂入って寝よっかな』
〈もう寝るの?〉
『ちょっと疲れてて。あ、明日放課後何するか考えててよ。先輩が行きたいとこ行こうよ』
〈俺の行きたい所?〉
『うん』
〈わかった、考えておくよ。……じゃあまた明日ね。おやすみ〉
『おやすみなさい』
電話を切り、少しの間ぼーっとした
『…………』
何だろう、何か……寂しい
電話をしている間は大丈夫だったのに切った途端心細くなった
やはり最近の俺はおかしい
それに気付けば先輩の事ばかり考えてしまっている
いかんいかん、とにかく風呂に入ろう
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