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第78話
急いで立ち上がり身なりを軽く整えた
林崎は何もなかったようにしれっとした顔をして受付カウンターへ……
「憂、一体何が……」
先輩が俺の方へ駆け寄って来た
その後ろに尾澤会長もいた
「……生徒会室へ来るよう申し上げたはずですが?」
尾澤会長が林崎に言った
「はい、ですが今日する仕事内容を憂君に伝え忘れてて。これから行こうと思ってました」
「そうですか。……では行きましょう。それと少しお話がありますので」
「わかってます」
鞄を持ってカウンターから出てきた林崎が俺の横を通り過ぎようとした時、俺と目が合ったあいつは一瞬笑った
『……』
「じゃあ頑張ってね」
そう一言言い放ち、林崎は尾澤会長に連れられ図書室を出て行った
「何をされたの?」
『えっいや、別に……』
先輩に知られるのが怖かった
今までも情けなくて恥ずかしい所ばかり見られてるのに、これ以上自分の惨めな姿を見せたくなかった
「来ないでってどういう意味だったの?」
『それは……ごめん、何でもないから気にしないで』
「目が赤くなってる」
『気のせいだよ』
先輩に背を向け受付カウンターに向かおうとした
くっ
服が擦れる度に激痛が……
冷や汗も出てくるし背中全体がジンジンして熱を発しているようだった
「待って」
先輩が近付いて来て俺の肩に手を置いた
「血が……背中に血がついてる」
『えっ』
爪痕から出た血がきっと服に滲み出てしまってるんだとすぐにわかった
『違っ……』
「脱いで」
『何言ってるんだよ、こんな所で』
「いいから!」
怒った口調に体がビクついた
尾澤会長は俺を閉じ込めた奴があいつだと知っている。と言う事はきっと先輩も……
「大丈夫だから」
『……』
先輩が俺の服に手を掛けた
そしてゆっくりと捲り上げたんだ
「…………っ」
『うっ……』
泣くな
泣いちゃダメだ
拳をぐっと握りしめ必死に耐えた
でも、悔しさと恥ずかしさで死にそうなぐらいつらかった
「歯型……手首も…………」
『先輩……』
抑え切れなかった涙が一筋、頬を伝って流れ出た
それを見た先輩は背中に触れないように俺を一度ギュッと抱きしめた
そして何も言わずに図書室を出て行ったんだ
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