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第89話
いつも夕方からバイトなのに夕方に終わるってなんか変な感じ
いつもだったら閉店間際で弁当類がほぼ売り切れてて買えないけど、今日はそのまま自分のバイト先で晩飯が買えるから楽だ
店を出て歩きながら先輩に電話した
『あ、先輩?今終わったんだけど』
〈お疲れ様、どうだった?〉
『ん、いつもと違う時間だし忙しかったからちょっと疲れたかも。お菓子コーナーで1番下の段の品出ししてたら後ろから子供に激突されてめっちゃ悶えた』
〈激突?背中大丈夫?〉
『大丈夫。かなりびっくりしたけど』
〈痛みは?〉
『大分マシだよ。先輩が塗ってくれてた薬がめっちゃ効いてくれてるんじゃないかな』
〈良かった〉
他愛のない話をしながら歩いて行く
だけど、先輩の声を聞いたら胸がまたきゅーっとしてきた
落ち着け落ち着け……
店でチョコエッグを見つけた話とか、お年寄りが多くて案内しまくってた話とかをしているといつの間にか結構いい所まで帰って来てた
〈ずっと一緒に居たのに、声聞いた瞬間また会いたくなっちゃったよ〉
『……うん』
〈今どの辺?〉
『あとちょっとで近くのコンビニ』
〈そっか、もう少ししたら着くね〉
『うん』
段々とアパートに近付いて来た
『あ、そうだ。帰ったらあっちの森飾らなきゃ』
〈俺はさっき飾ったよ〉
『え?どこに?ってか先輩俺に譲ってくれてたからまだコンプ出来てなかったよな?あ!しまったー残ってたチョコエッグ買えば良かった!』
〈別にいいよ。元々憂の為に買った物なんだから〉
『俺の為……量が尋常じゃなかったけど』
〈まぁ気にしないでよ。さてどこに飾ったでしょうか?〉
『えーっ!今度先輩んち行った時探してもいい?』
〈今からでも大歓迎だよ〉
『……もう家着いたもんね』
携帯を耳に当てたまま部屋の鍵を取り出し、鍵を開けて中に入った
荷物をそこら辺に置き、冷蔵庫の中にさっき買った弁当だけ入れた
そして鞄に入れていたフィギュアを全部テーブルの上に出した
『さて、俺も今から飾ろっかな』
〈憂はどこに飾るの?〉
『さて俺はどこに飾るでしょーか?』
〈わかった、玄関でしょ?〉
くそっいい場所だと思ったのに。玄関はやめだ
フィギュアを数個片手に持ち部屋の中をウロウロ
テレビ台の上が丁度よさそうだったからそのまま持っていた数個を並べた
ってか電話を切るタイミングがわからないぞ
〈……会いたいな〉
『俺も……明日学校終わったらこっそり先輩んち行くよ』
〈本当?〉
『うん。でもお泊まりはしないからね』
〈俺は構わないよ〉
『ダメだって』
玄関のチャイムが鳴った
『あ、先輩ごめん。誰か来たみたいだから切るね』
〈わかった〉
『じゃあまた明日……』
そう言って電話を切り携帯をテーブルの上に置いて玄関へ向かった
『今開け……』
玄関のドアを開けると、ついさっきまで電話で話をしていたはずの先輩が片手に携帯を持ってドアの前にいたんだ
「……会いに来ちゃった」
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