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第88話
「……どうしてもダメ?」
『ダメ、謹慎中なんだから見られたらややこしくなる』
「日曜ぐらい別によくない?」
『ダメ』
「もう、変なとこだけ真面目なんだから」
『ダメ』
「頑固……」
『そんなに遠くないんだから大丈夫だって』
「俺はギリギリまで憂と一緒にいたいんだけどなー」
『ダメ』
家まで送ると頑なに言う先輩
出来るなら俺だって先輩とギリギリまで一緒にいたいよ
だけど、学校からもそんなに離れてないし謹慎中の身の先輩が外でウロついてる所……しかも俺と一緒にいる所なんて見られて処罰が重くなっちゃったら大変だ
「はぁ……寂しい」
鞄やら制服やら置きに一旦家に帰らなきゃいけないからそろそろ出ないといけない時間だな……
それに裾を折りまくったズボンで行く訳にはいかないし色々隠す為に着替えなきゃ
不審がられちゃう
『……じゃあそろそろ行くね』
「待って」
玄関に向かおうとしたら腕を引き寄せられ抱き締められた
「あとちょっとだけ」
『……』
あ、来る
そうわかった瞬間目をぎゅっと閉じた
『先輩、昨日から俺にキスし過ぎ』
「ダメ?」
『……ダメじゃないけど恥ずかしい』
「可愛い」
『だから可愛くなんんんっ!!』
人が喋ろうとしてるのに強引に唇で抑え込まれた
「もう少しだけ充電させてよ」
『ちょっ……時間っ……んッ』
何度も何度も唇を重ね、先輩は名残惜しそうにまた俺をぎゅっと抱き締めた
「終わったら連絡してね」
『……うん』
先輩んちを出て俺は慌てて自分のアパートへ
本当に遅刻しそうになってヤバかった
バイト中、俺の頭はフワフワしっぱなしだった
口元の痣は大分薄くなって来たから今日から裏方じゃなくて通常通り店内で品出し
昼間に出る事なんて滅多とないから新鮮な感じだった。そしてお年寄りが結構多くて案内をお願いされる事が多かったんだ
……あ、チョコエッグ発見!
お菓子コーナーの品出しをしに向かったら1番最初に目についた
だけどもう殆ど在庫がなくなっていたんだ
昨日発売でこれだから今日にはきっと売り切れになる
先輩が貴族買いしてくれたおかげで無事にコンプする事が出来た。本当に嬉し過ぎる
変な優越感が湧いてて1人でニヤついてしまった
帰ったら飾る場所を考えなくちゃ
先輩、今何してんだろ……
ふとした瞬間に先輩の事を考えてしまう
俺って……本当に先輩に好きって言われたんだ……
実感がなさ過ぎて変な感じがするけど、明らかに俺は浮かれていた
仕事中、自分の靴が左右反対だった事に気が付いたんだ
や、普通履いた瞬間気持ち悪くて気付くだろっ
そんな事にも気が付かないなんて……結構重症
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