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第95話
先輩といる時間は過ぎるのが早い
その日はそのまま先輩んちで晩御飯をご馳走になった。暇過ぎて夕方にはもう出来上がっていたらしい
そして先輩んちのあっちの森フィギュアはトイレの中にいた。どうりでリビングにもキッチンにもいないはずだ……
『明日も学校だからそろそろ帰るね』
「はぁ……明日はバイト?」
『ううん、バイトは明後日』
「じゃあ明後日は来れないんだ……」
『うん、ごめん』
「その次は?」
『もしかしたら図書室に行かなきゃいけないかも。あいつ学校辞めたから図書委員俺1人になっちゃったし……
あ、でも木曜日バイトかなぁ?んー帰ってからシフト見なきゃわかんないや。次の日も金曜日だから当番だ。だから木曜と金曜は今日より来るのが遅くなるかも』
「任せて!俺が尾澤に猛抗議するから!どうせ誰も来ないんだから図書室当番なんて俺が廃止にしてあげるよ」
『はは、それが出来たら最高だね』
「任せて」
『うん』
まだ帰りたくないな。今日は何だか俺の方が名残惜しいや……
だけどこれ以上遅くなっちゃったらまた送るダメの攻防戦が始まってしまう
『ん、じゃあ明日また来るね。課題頑張って』
「待って」
『……っ』
別れ際のキスはいつも少し激しめ
これから寂しくなる感情をまるで誤魔化してるみたい
『ダメだってば……んんっ』
俺は先輩の服をぎゅっと握りしめた
「気持ちいい?」
『……バカ』
「帰したくないな」
『ダメだって』
「はぁ……気をつけてね」
『うん』
バイトがある日は行けないけど、学校が終わったらすぐに先輩に会いに行くって言う日が続いた
先輩がいない学校生活は本当につまらない……
先輩が謹慎になったという情報は殆どの生徒の耳に入っていた
クラスの連中に色々聞かれたけど、俺は知らないを突き通した。
あの日の事を知っているのは俺と颯太と尾澤会長だけ……
颯太だけは特別、俺の親友だから
多分林崎に脅されていたあいつも色々知ってそうだけど、その話題になると奴は何も知らないフリをしていたんだ
「今日から図書室当番は廃止にします」
委員会に出席すると、図書委員会長は突然そう言った
「生徒会長からの指示がありました。
放課後生徒を1人残らせるのは防犯上危険でははないかと……近頃変質者情報も多くなって来ているのでそろそろペアを組む案も考えていましたが、日数が増えて個人個人の負担が増えると思うのでそれはしない事にします。
利用者もほぼありませんし、これからは月一度の本の修理、整頓だけお願いしたいと思います」
月1……や、やった!
しかも学年で交代だから3ヶ月に1回だけじゃん!!
俺は盛大に大喜びした
『先輩!?ちょっと聞いて欲しいんだけど!』
委員会が終わった後俺は急いで先輩に電話した
〈どうしたの?〉
『さっき委員会だったんだけどさ、毎週の図書室当番が廃止になったんだって!!めっちゃ嬉しいんだけど!』
〈本当?良かったじゃない〉
『うん!これで金曜日もバイト入れるようになったよ!』
〈……それじゃ余計に会える時間が減るじゃないの〉
『え?』
電話の向こうで先輩がいじけだした
〈俺が何の為に尾澤に鬼電したと思ってるの?……尾澤に猛抗議するって言ってたでしょ?〉
猛抗議……まさか
〈俺は有言実行するよ〉
『マジっすか』
図書室当番の廃止……それは先輩の仕業だった
そんな素振り全く見せなかったのに、実は毎日毎日授業中問わず会長に電話をしまくっていたらしい
あまりのしつこさに尾澤会長が折れたそうだ
やばっ
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