125 / 184
第135話
外……しかもマンションの真ん前なのにぎゅーっと抱き締められた
『朔夜、近所の人に見られるよ』
「ただのハグだよ」
少し体を離し顔を見つめて笑った
「でもバイト終わったんなら連絡してくれれば良かったのに。いつからここにいたの?」
『えっと少し前から?インターフォンの鳴らし方がわからなくて……』
「インターフォン?ああ、そう言えばまだ1度もした事がなかったね。簡単だから教えてあげるよ」
『うん』
そのまま朔夜に連れられ部屋番を押す台の前まで連れて来られた
「……ね?簡単でしょ?」
『うん。一度鳴らしてみてもいい?』
「いいよ」
朔夜の指示通りにボタンを押し鳴らしてみた
「ほらこれでもう大丈夫」
『ん、ありがとう』
やり方は覚えた
そして朔夜はいつも通りの優しい朔夜だった
昼休みのあれは一体何だったんだろう
「ご飯はもう食べた?」
『んーん、あんま食欲無いから今日はもういいかなって』
「食欲無い?どこか調子でも悪いの?」
『ううん大丈夫』
俺が持っている鞄に気が付いた朔夜はまた驚いたような表情を見せた
「もしかして泊まりに来てくれたの?」
『いやっそんなつもりは……一応?』
「ホント可愛い事してくれるよね」
『えっ?』
俺の頭に手を置きポンポンする朔夜
「取り敢えずうち入ろっか」
『うん』
部屋の中に入ると、いつも通り広くて綺麗な部屋
俺とは違い突然の来客でも全然困らない朔夜の部屋
本当に綺麗好きだとよく分かる
昨日の俺んちは本当に汚かったから恥ずかしい
「少しでもいいから何か食べないと」
『大丈夫だよ』
「本当に?軽い物だったらすぐ出来るけど」
『ううん、ありがとう』
「……わかった。けどお腹空いたら直ぐ言うんだよ?」
『うん。あのさ……』
昼休みの事を早速朔夜に聞いてみる事にした
緊張する方のドキドキをしながら
「……え?俺、何か変だった?」
『う、うん』
「嘘ーっ」
何の事なのかさっぱり分からない様子の朔夜
『や、だっていつも以上にしつこかったから』
「しつこい……」
『あ、いやっそんな変な意味じゃなくてっ』
やばいつい本音が……
連絡をするだけでも躊躇するくせに本人に直接言っちまうとか本当訳がわからん
自分でもたまに自分の性格がわからなくなる
「しつこいか。確かに俺ってしつこいよね、うんうん」
どうやら本人は自覚ありみたいだ
「あー、わかった。きっとあれのせいかも」
『あれ?』
「前の席の奴が憂の事可愛いってほざきやがったからさぁ……
ちょっとムカついたんだよね」
『可愛い?ええっ』
「憂の事をそんな目で見る奴が他にもいるんだと思ったら超イライラしちゃってさ。
だからそういう連中に憂は俺のだからって言うのを見せつけたかったんだよ」
つまりまた嫉妬……
「俺って憂の事になると余裕がなくなるみたい」
そう言い、朔夜は俺の隣で笑った
.
ともだちにシェアしよう!

