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第134話
結局あの後すぐチャイムが鳴って気まずいまま逃げるように教室に戻って来てしまった
しかも夕方からバイトだから今日はもう朔夜と会う事はない
せっかく薄れたと思ったのに、別件でまた俺のモヤモヤが悪化してしまったじゃないか
『はぁ……』
学校が終わって急いで下駄箱に向かっているとまた廊下で尾澤会長と遭遇した
本当にビックリする程よく遭遇するもんだ
『お疲れ様で……風邪ですか?』
会長は暑い中マスクをしていた
「いえっ唇を保護する為ですよ」
『保護??』
「気にしないで下さい」
唇でも荒れてるのかな?
会長も忙しそうだし、特に会話もせず会釈だけして俺はバイト先へ急いだ
尾澤会長が廊下を歩いてたって事は朔夜のクラスももう終わってるのか
今日は珍しく超暇だった
どうやら昼勤務の人達がほとんど終わらせてしまってたみたい
雑用やら掃除ばかりやらされ、バイトの俺はいつもより1時間早くに上がらされたんだ
余裕だったな
たまにはこんな業務もいいな
なんて思いながらのんびり歩いてアパートに帰って来た
いつもならバイトが終わったら朔夜に連絡するんだけど気まずくてまだ連絡出来ていなかった
しかも今日はいつもより終わる時間も早いし……
帰り道ずっと考えていた
気まずいままは嫌だし、バイトも早めに終わって時間もあるし電話じゃなくて朔夜んちに直接行ってみようかなって
だけどそんなアポなしで急に行って逆に迷惑になるかもとか色々考えてしまったんだ
どうしよう
悩んでいても時間が勿体無いだけだし、結局俺は朔夜のマンションへ向かう事にした
一応いざって時の為に着替えと学校の用意を入れた鞄を持って……
しかし到着したのはいいが、チキンな俺はマンションの出入り口の前で動けずにいた
インターフォンの鳴らし方がわからない
今までは着いたら朔夜に電話してそれから開けたりしてもらってたから……
自動ドアすら開けられないし
多分入った所にあるあの台で部屋番を押してインターフォン鳴らしてから部屋主に開けてもらうシステムなんだろうけど、時間が時間だしもし間違えて知らない人んち鳴らしちゃったらどうしようとか考えてしまった
出て行く時は何もしなくていいのに流石高層マンション、入る時のセキュリティーは万全だ
仕方ない、帰るか……
諦めて帰ろうとした時、マンションから誰か出てきた
「……えっ?」
『あ……』
なんとタイミングよく出て来たのは朔夜だった
「何でここに居るの?バイトは?」
気まず
『えっと、今日暇だったから早く終わったんだ。それで時間ちょっとあるし来てみたんだけど……
出てきたって事は何処か出掛けるんだね?ごめん、帰るよ』
突然の遭遇にかなりテンパってしまって逃げたくなった
「待って待って」
慌てて帰ろうとした俺を朔夜は呼び止めた
『えっ?』
「いや、今から憂のバイト先に行こうとしてたんだよ。そしたらここに居たからびっくりして……
もしかして俺に会いに来てくれたの?」
『うん』
俺は戸惑いながらも返事をした
すると、朔夜は口元を手で隠しこう言ったんだ
「どうしよう、めっちゃ嬉しい」
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