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第187話

今日は荷物を持ったままバイト先までやって来た 終わってから一旦アパート帰って中の着替えを入れ換えてと さすがに同じ服をずっと着回すのもな…… 仕事内容はいつもと変わらない だけど、今日は商品の入れ替えがあったんだ 積み上げていた物を全部裏へ持っていき社員の人と一緒に新商品をどんどん陳列していった 「じゃあさっき捌けたやつ値引いて出してて」 『了解です!』 大好きな裏での仕事 もくもくと単純作業 やっぱ俺は表に出るより裏で雑用してる方が好きだなー そしてまた表に出て空いてるスペースに値引きシールを貼った商品を次々と並べた 楽勝、楽勝♫ 機嫌良く陳列していると、肩をポンっと叩かれた 『……?』 「どうしたの?凄く機嫌いいじゃん」 『秀幸先輩っこんばんは』 慌てて挨拶した 『本当よく会いますね』 「今までちょくちょく憂君の横通ったりしてたけどな」 『あはは、ごめんなさい、俺本当周り見えなくて。話し掛けてくれてなかったらきっと今も気が付いてなかったかも』 「今日は何か新しいの入った?」 『新商品ですか?それなら……』 さっき社員さんと一緒に陳列した商品の所へ秀幸先輩を案内した 「あーこれはいいや。ごめんな」 『いえいえ全然大丈夫ですよ』 誰にだって好き嫌いはある…… 「本当来る度憂君いる率高いよ。夏休みなのにバイトばっかしてて彼女大丈夫なの?」 『彼女?』 「あ、いない感じ?」 『彼女なんかいないですよ!あはは……』 その代わりに彼氏がいる、とは言えないや 男同士だし それに朔夜は俺がバイトばっかでも毎日会ってるからそんなに文句言わないし 「へぇ、いないんだ」 『?』 「ううん、何でもないよ。案内ありがとな」 秀幸先輩はそう言い、また俺の頭を撫でた 『あの……』 「ん?」 『頭……』 「頭?あっごめん可愛くてつい」 『え?』 その時、俺の頭を撫でている秀幸先輩の手がバシッと弾き飛ばされた 『!?』 「…………」 俺の隣で朔夜が物凄い不機嫌な表情をして秀幸先輩を睨んでいた 『さ、朔夜』 来てたのか!! 「えっ何?誰?」 「俺のなんだから勝手に触るな」 『!!』 「俺の?え?」 『ちょっ……!』 「憂、もうすぐバイト終わるよね?一緒に帰りたいから外で待ってるよ」 朔夜はそう一言だけ言い、俺の頭を撫でた後どこかへ行ってしまった 「何あいつ」 『ご、ごめんなさい。俺の知り合いと言うか何て言うか……あっ手大丈夫ですか!?』 「一緒に帰るって何?俺の?」 『あー今日あいつんち泊まるんで……気にしないで下さい!それよりすいませんでした』 ってか店の客になんて事してくれたんだよ! 「あーうん。友達?や、憂君が謝る事じゃないから」 『本当ごめんなさい』 「大丈夫だよ。ってかずっと喋ってちゃマズイよね、もう行くよ」 『あっはい!すいません……』 秀幸先輩は苦笑いし、買い物を再開しに行った 『はぁ……』 俺も早くこれ終わらせなきゃ ってか冷や汗ヤバっ でも喧嘩にならなくて良かった や、外で待ってるって事は秀幸先輩と鉢合わせしちゃうんじゃあ…… バイトが終わって俺は慌てて店の外に出て朔夜を捜した 誰かが店の外で揉めてるとかそんな話は入って来なかったけど不安だ 「憂っ」 俺の姿を先に見つけた朔夜がこっちに走って来た 『朔夜!ちょっ……』 いきなり抱き締められた 『やめろって!!何考えてんだよ店の前だろ!誰かに見られたらどーすんだよッ』 「俺は別に構わない」 『俺のバイト先だっての!!……取り敢えず場所を変えよう』 ぐっと朔夜を押し退けた 自分のアパートに到着し、部屋の中に入って荷物を下ろした 「それよりさっきの奴だよね?憂に絡んでる奴って」 『絡むって……普通に喋ってただけだろ』 「頭撫でてたのに?」 『それは……俺もよくわかんないけど。とにかく店の客なんだから変な事しないでくれよ』 「客だったら憂に触ってもいいの?」 『だからそうじゃないって!何でそんな風になるんだよ』 「憂はただの客だと思ってても向こうはそうじゃないかもよ」 『は?』 「それに憂も何触らせてんの?隙あり過ぎでしょ」 『ちょっ何言ってんだよ』 「ムカつく」 『ムカついてるのはこっちだ!』 言い合いになってしまった…… 『朔夜は何でもそんな風に思い過ぎなんだ!学校でもそうだ!』 「思い過ぎなんかじゃない」 『思い過ぎだってば!』 「憂はわかってない」 『わかんねーよ!』 「はぁ……」 溜息をつかれてまたイラっとした 『ごめん、せっかく来てくれたんだけど今日はもう帰って。朔夜んちに行くのもやめとく』 「どうして?」 『言わなくても分かるだろ!……朔夜が出て行かないんだったら俺が出て行く』 「どこに?」 『わかんねーよ、とにかくもう帰って』 「……」 朔夜が俺に触れようとした だけど、俺はそれを拒否したんだ 「わかったよ」 そう言い、朔夜は一瞬寂しそうな顔を見せ部屋から出て行った .

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