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第188話
朔夜と喧嘩してしまった
『はぁ……』
ってか俺悪くねーし
頭撫でられただけで何で俺が責められなきゃいけないんだ
それなら尾澤会長にだって撫でられた事あるし!
『……』
……俺が悪いのか?
相手が全く知らない他人なら話は別だってか
あーもう訳わかんねぇ
だけどせっかく来てくれてたのに朔夜を追い返してしまった事に少し罪悪感を感じた
でも……
疲れてるしごちゃごちゃ考えるのが段々嫌になって来た
『腹減った』
一旦帰ってまた朔夜んちに行く予定をしていたから晩飯も何もない。冷蔵庫の中も空っぽだ
仕方ない、今からコンビニ行くか……
財布と携帯だけを持ち部屋から出た
せっかく明日からバイトが連休だから朔夜とゆっくりしようかなと思ってたのにな
コンビニに到着したと同時に携帯に着信が入った
朔夜……
出るか出ないかかなり悩んだが、鳴り止まない着信
『……はい』
止まってもまた直ぐに鳴りだすもんだから仕方がなく電話に出た
〈憂?〉
『何?』
〈……怒ってる?〉
恐る恐る聞いてくる電話越しの朔夜の声にふぅっと溜息が出た
言い合いした後で普通に電話掛けてくるとかある意味凄いよなって思う。その辺は流石朔夜だな
『……もういいよ。それよりごめん、今コンビニの前だから』
〈コンビニ?外にいるの?〉
『うん、飯買いに来た』
〈じゃあさ、今から……〉
その時、下を向いて話していた俺の視線の先に誰かの足先が映った
「あれっ憂君こんな所で何してるの?」
『え?秀幸先輩?』
俺がそう言うと、急に電話がブツッと切れてしまった
『あれ?……朔夜?』
……切れてる
電波でも飛んだのか?
俺が不思議そうに携帯を見ていると秀幸先輩がまた話し出した
「1人?なんか泊まりに行くとか言ってなかったっけ?」
『あー……実はそれなしになっちゃって。コンビニに飯買いに来たんです』
「そうなんだ。あ、じゃあさ今からどっか食べに行かない?」
『え?今からですか?』
突然のお誘い
でも……
『すいません、せっかくのお誘いなんですけど今日はやめときます』
俺は断った。さすがに行くのはちょっとな
「あ、そう?そうだね、バイトで疲れてるだろうし」
『ごめんなさい』
「せっかくだからちょっと話しない?バイト中だとゆっくり話出来ないし……あ、ごめんお腹空いてるか」
『いえいえ、少しなら大丈夫です』
「本当?じゃあ向こう行こっか」
『はい』
まぁ話すだけだったら……
携帯も鳴らないし朔夜には後でかけ直せばいいだろ
そう思い、俺は秀幸先輩と近くの公園へ向かったんだ
夜の公園って街灯があるとはいえ誰もいないし薄暗くて不気味だ
たまに風で揺れるブランコについびびってしまう。変な映画の見過ぎだな
「家この辺?」
公園のベンチに座った時聞かれた
『まぁ近いですね。秀幸先輩もこの辺に寮があるんですか?』
「んーまぁちょっと離れてるけど1番近いコンビニがあそこだったからさ。本当は夜10時以降は外出禁止なんだけど夏休みなんだし大人しくしてる奴はいないよね」
『あはは、そうですね』
秀幸先輩が俺の隣に座った
『あの、今日は本当にすいませんでした。気を悪くしましたよね』
「別に!だから憂君は何もしてないでしょ」
『まぁ……』
「何か普通の友達って感じでもなかったけど……どういう関係?相手は年上だよね?」
『それは……えっと……』
俺がもごもごしていると、何かを察したのか秀幸先輩はこう言った
「俺、偏見ないよ?」
偏見……
『……はい、実は付き合ってて』
「あーやっぱり?憂君の事俺のとか言ってたもんな」
『あはは……』
なんて言えばいいのかわからない時ってつい愛想笑いしちゃう
秀幸先輩は1人で納得したかのように頷いて言った
「やっぱりかー、そっかそっか」
『秀幸先輩?』
すると秀幸先輩は俺の肩に腕を回して来たんだ
「残念、狙ってたんだけどな」
『え?』
「俺こう見えて自分から話し掛けるの余り得意じゃないからさ、やっと普通に話せる様になったと思ってたのに。前から可愛い子だなって思ってたから」
『あの……』
突然の告白に戸惑ってしまった
「もしかして俺のせいで喧嘩した?」
『え!?』
「やっぱりそうか。何か元気ない顔してたから」
『…………』
その時、首に回っていた腕にぐっと引き寄せられ頬にキスされたんだ
『ちょっ!何するんですかっ』
俺がそう言うと、秀幸先輩は俺を抱き寄せ耳元でこう囁いた
「慰めてあげようか?」
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