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第190話

フワッと香るお酒の匂い…… 『秀幸先輩酔ってますよね?』 「あ、分かった?」 やっぱり 「やー狙ってたのは本当なんだけど何となく気付いちゃったからさぁ。帰って呑んでて気付いたら家にあるお酒全部無くなっててそれでコンビニに買いに来たって訳なんだ。まぁいわゆるヤケ酒?」 『未成年ですよね?』 「私服だったらわからないし」 『あの、それより……』 俺は秀幸先輩の体をぐっと押して離れようとした 「やっぱりダメ?」 『すいません』 「だよねー憂君はそんな子じゃないもんなぁ……残念」 『ごめんなさい』 「……やっぱ可愛いな」 『っ!』 「大丈夫、これで諦めるからさ」 また頬に軽くキスされ、そのあと秀幸先輩は俺から離れた 「さて、コンビニに戻るか」 『は、はい……』 キスされた頬を摩り苦笑いした 秀幸先輩と他愛のない話をしながら並んで歩いた 「さっきは悪かったな、酔いが覚めて来た」 『いえ……びっくりしましたけど』 「店で会っても気まずくならないで普通に接してくれよ?」 『それは勿論』 「ありがとう」 『あはは……』 「だけど相手が同性だからって今みたいに安易について行っちゃダメだよ?男でも危ない事あるんだから」 『そうなんですか?』 「皆んな言わないだけでゲイやらバイやら色々いるからね」 ゲイは知ってるけどバイの意味が分からない バイ……?ヤバイ? 今度颯太に聞いてみよう だけどまさかキスされるなんて思わなかったから本当にびっくりしたけど…… 酔っ払ってたんなら仕方ない 仕方ないのか? でも唇にされなくて良かった…… 「ってかあの時は何だこいつって思ったけど思い返してみると憂君の彼氏めっちゃ格好いいね」 『あはは……まぁそうですね』 正直に言う 朔夜の外見は半端ない。外見だけは…… 「そりゃ俺じゃ勝ち目ないわ」 『あはは……』 笑って誤魔化せ 漸くコンビニが見えて来たって所でそこから誰かが走って来るのが見えた 「……ん?」 『あれは……っ』 何故ここにいる!? 「憂!!」 今にも殴りかかりそうな勢いで朔夜がこっちに向かって来た 『朔夜!やめて!!』 俺は直ぐに朔夜を抑えようと秀幸先輩の前に立ち塞がった 『落ち着いて!大丈夫だから!』 「退け!」 『だから落ち着けって!!』 「何処に連れて行かれてたんだ!?何もされてないか!?」 『だから大丈夫だってば!』 必死で朔夜の体を抑えた 「あー俺、さっき憂君にフラれたんで大丈夫っすよ」 「……は?」 「なぁ?」 『え!?は、はい……まぁ』 急に話を振られて焦った 「ま、そういう事なんで心配しなくても大丈夫ですよ。すいませんでした。可愛い恋人がいて羨ましいです…… やっぱもう酒はいいや、帰るね」 秀幸先輩はそう言い、俺に笑いかけた後背中を向けて暗闇に消えて行ったんだ 「…………」 『あー……俺ももう晩飯いいや。帰るな?』 喧嘩中だし気まずい俺はそう言い、朔夜の横を通り過ぎようとした だけど、朔夜がこのまま俺を帰す訳がない…… ガシッと腕を掴まれた後、俺はアパートまで引き摺るように連れて行かれたんだ 部屋の中に足を踏み入れた瞬間、玄関が閉まると同時に壁に体を押し付けられ逃げ場をなくされた 『……っ』 「何をされたの?」 いつもと雰囲気が違う低い声…… 怖くて朔夜と目を合わせられない 『……別に何も。ってかどいてよ』 「憂、包み隠さず全て俺に話すんだ。じゃないと本気で怒るよ」 『怒るって何だよ。ってか帰ったんじゃなかったの?』 「今はそんな事聞いてない」 『…………』 「言わないなら今すぐあいつ追い掛けて無理矢理聞き出すよ?」 『……わかった、ちゃんと言うから。でも今後秀幸先輩に会っても絶対に何もしないって約束して欲しい』 「やっぱり何かされたんだね?」 『……』 「わかった。約束する」 朔夜の返事を聞き、俺は渋々話したんだ 『朔夜の言う通りだった。前から俺の事気になってたんだって』 「うん」 『そう言われた時肩に腕回されてキスされて……』 「は?」 『いやっ!口じゃなくて頬に……んんッッ!』 押さえつけられ凄く強引なキスをされた 『待っ……んっ』 「……」 『朔っ………苦し…………ッ』 足に力が入らなくてズルっと座り込みそうになった だけど、朔夜の腕はしっかりと俺を支えていたんだ .

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