3 / 12

嘘の種から実の花が咲く話 3

 数日後のある夜のことだった。雲雀の部屋で雲雀の帰りを待っていたおれは、扉の開く音で勢いよく顔を上げた。 「雲雀! おかえり!」 「ただいま。ごめんな、昼休みも放課後も一緒にいられなくて」  そう、今日のお昼休み、雲雀は愛の呼び出しに応じたまま戻ってこなかった。相手は『軽音の歌姫』で、告白されて断ったら軽音部の先輩方に「最後に食事くらい、いいだろ? なあ」と囲まれたらしい。  そして放課後、一緒に帰ろうとしたら、他校の出待ちのファンがいっぱいいて、おれと雲雀は別々の道で帰ることになってしまった。  実はお昼休みからずっと話したいことがあったのに、おれは雲雀とずっと話せないまま今に至るのだ。 「ううん、大丈夫! それよりね、あのね!」 「ん? ちょっと待って、着替えるから。そこ座ってて」 「う、うん!」  おれは雲雀のベッドに座って、ふう、と息をつく。 「……あ、あのね?」 「うん、何?」  着替えるためにクローゼットを開いた雲雀の背に向けて、おれは叫んだ。 「……おれ! 告白されちゃった!」  ガタガタンッ!! と大きな音を立てて、ハンガーをかけようとした雲雀の手が滑った。 

ともだちにシェアしよう!