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嘘の種から実の花が咲く話 4

時間を遡ること数時間前。お昼休みのことだった。愛の呼び出しを受けた雲雀が行ってしまった後、ぽつんとひとり残されたおれは先に中庭でお弁当を広げていた。おれは食べるの遅くていつも雲雀を待たせてしまう。だから、今日は先に食べ始めた。  もくもく、と食べながら雲雀のことを考える。告白されて、返事はどうしたのかな。もしかしてそのまま付き合うことになったから、戻って来ないのかも。考えれば考えるほど不安になった。いつものように「断ったよ」って言って、安心させてほしい、なんて考えを振り払うように頭をぶんぶんと振った。 「あれ? 陽くん、ひとり?」  聞き慣れた声がして、顔を上げる。ベンチに座っていたおれのところに近づいてくるのは、優介くんだった。  優介くんは雲雀と同じ特進クラスの生徒で、雲雀の友達だ。雲雀と同じくらい優しくて、かっこいい。茶色の丸っこい目や栗色の短い髪が優しさを表しているみたい。 「雲雀は? 一緒じゃなかったの?」 「えっと、あとから来る……と思う」 「ああ、また呼ばれてるの? 雲雀は本当にモテるなー」  おれが言葉を濁したら、優介くんは察してくれたみたいで、苦笑している。 「隣、いい?」 「うん」  一人で寂しかったから、少し横にずれて優介くんに座ってもらった。優介くんは優しくて面白い。お話をたくさんしてくれて、おれもたくさん笑って、不安な気持ちも少し忘れることができた。 「……あ、あのさ、陽くん」 「なぁに?」  ケラケラと二人で笑っていたら、急に優介くんがきょろきょろと周りを見回した。おれが不思議そうに見ていると、落ち着かない様子でそっと小声で囁く。 「その……陽くんと雲雀って、……つ、付き合ってるの?」 「え?」  思いがけない質問に、箸から玉子焼きがポロリと落ちて、またお弁当箱の中に戻ってしまった。一瞬遅れて、慌てて首を振る。 「付き合ってないよ!? なんで?!」 「あ、ごめん。いつも一緒にいるし、そう思ってる子もいるみたいだから……」 「そうなの!?」 「うん。雲雀もあんまり否定しないというか、曖昧な感じだったから、どっちなんだろう、って気になっちゃって」 「え? 雲雀が?」 「うん。ごめんね急に」 「あっ……ううん、大丈夫。気にしないで」  申し訳無さそうに謝る優介くんを悪いと思わない。だけど、なんで雲雀は否定しなかったんだろう。  お弁当を食べる手を止めて考えていると、優介くんがいつもと違った固く緊張した声で「陽くん」とおれの名前を呼んだ。優介くんはぎゅっと眉を寄せて、おれを見つめ、両手の拳を膝の上で固く握っていた。 「……優介くん? どうしたの?」 「――っ! 陽くん! お、おれ、実は……陽くんのこと――」 「……え……?」  続く言葉に、おれの頭は簡単にフリーズしてしまった。

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