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二人の教室

 傾げて柔らかくなった太陽の光に、遠くから聞こえる吹奏楽部の音、部活の声。京と二人きり、放課後の教室。日直の僕が日誌を書くのを待ちながら、たわいない会話で笑い合う。  あぁ、こうして同じ教室にいられるのもあと少し、もうすぐ卒業してしまう。 「高校になっても同じクラスだといいな」と京に言われて驚く。京は工業高校、僕は普通校に決まってなかったっけ? 驚いた様子の僕に「同じ高校行くんだろ」と京が問いかける。  そうだっけ? 同じ高校なんだ。まだ一緒にいられるんだと僕は嬉しくなる。 「ボケてんなよ」と頭を小突かれてえへへ、と笑うと二人の間の時間が止まる。ふいに訪れたキスの気配に顔を上げると京の顔が近づいた。  優しく触れるだけの唇。  ふわりと心が温かくなり、嬉しくなる。  いつもだったらすぐに離れていくそれは、もう一度近づいてきて、頭ごと京に引き寄せられる。もう一度強く唇を押し付けられ、柔らかくて強い舌が唇を舐める。突然の深いキスの前兆に驚いていると、舌はそのまま強引に唇を割って歯列をなぞられる。  どうしよう……。  迷いながら少し口を開くと、性急な舌が僕の舌を求めて入ってきた。初めてで、どうしたらいいかわからない。溺れるようなキス。  戸惑いの向こうに、時折ゾクリとするような感覚があって、今までの気持ちを通い合わせるだけのキスとは違う本能で相手を求めるようなキスの、性的な感覚に怯えながらも興奮してくる。  ガタッと二人の間にあった机を強引に押し退け、椅子に座った京の膝の上に引き寄せられる。小柄な僕より一回りも二回りも大きな京は簡単に僕を抱きすくめる。 「ひろむ……」  キスの合間に名前を呼ばれ、返事をする前に京の手が僕の身体の線をなぞる。襟すじから背中の弱い部分をなぞられ「んんっ」とキスをしたまま声が零れた。  強く抱き寄せられたまま、もう一つの手が腰をなぞりゆっくりと下に降りていく――。  こんな所で……。

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