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二人の朝 3

 床に座った京が、ソファに座った弘の足の間で太ももを枕にくつろいでいる。普段の弘ならすぐに勃ってしまいそうだけど、朝からベッドの上とお風呂でイチャイチャして、さすがに今日はもうその元気もない。  コロンと頭を弘の足に預けた京が、スマホの画面を覗きながらちょんと太ももをつついて話しかける。 「あのさ、色々してから言うのもカッコ悪いんだけどさ……」 「何?」 「弘は俺と付き合ってくれる?」 「え……」  自信なさそうに言われて驚く。 「弘は好きって言ってくれたけどさ、俺、結構酷いじゃん。正直、俺がやったのって二股? 彼女いても弘に気持たせるような事した気がするし、今回の約束だって弘に誘われなかったら、放置しちゃおうかって考えてた。大事にしたいと思ってたけど、実際は弘も陽菜も大事に出来てない気がするんだよ」 「大事にしてくれてたよ」 「そう思ってくれるのは嬉しいけどさ、俺だったらやだよ。だから弘も、他の人と付き合った方がいいんと思うんだけど、俺、やっぱり弘の事好きみたいでさ……、昨日から一緒にいて、改めて好きだって思った」  顔を見ないまま話していた京が、向き合って弘を見上げる。 「だから……、俺と付き合って」 「……うん、お願いします……」  真っ直ぐに見上げられ、言葉に詰まった弘が何とか返事をすると、へへっと笑った京がソファに乗り上げて、弘を抱き締める。 「俺の事、嫌になったらそう言って」 「ならないよ」 「それでも、不安なのも、嫌なのも全部言って? 黙って居なくなるとかは無しにして」  そう言われて、弘は自分が深く京を傷つけていたのだと知る。 「うん、ごめん。今度はちゃんと言う」 「俺も、不安にさせないように好きって言うし、納得するまで追いかける」 「うん」 「それで、もう泣かさないようにするからさ、弘は俺以外の所で泣かないで」 「何それ、泣かさないようにするんじゃないの?」 「そうだけど、泣きたくなったら俺の所に来いよ。結構……弘の泣き顔ヤバイ。我慢してる声とかも堪らなくなる。俺、誰にも見せたくない」  弘は、我儘な独占欲に心臓を掴まれて「何それ」と笑おうとして失敗する。ぎこちなく笑って、声の震えをこらえる。 「泣いちゃう?」 「泣かない!」 「泣いてもいいのに……。弘は泣き虫だからなぁ」 「いつもそんなに泣かないから! そんなに泣いてたら格好悪いじゃん」  そう言いながら『昨日も泣いたっけ?』と思い出す。そして泣いた状況も思い出して赤くなる。 「泣いてよ。女が泣いたら反射的に謝りたくなるっていうか、罪悪感ばっか感じるんだよ。陽菜もどこまで行っても恋人っていうか守る対象で……。でも弘はちょっと違って、守りたいのと同時にもっと泣かしたいって思ったりもする。……怒る?」  そう言って弘の顔を覗き込む。 「怒ってないよ」  ──むしろ、嬉しいかも……と、にやける顔を繕う。 「前『キス友』って言ってただろ。キスもする友達だっけ、友達なのにキスができたら恋人にもなれるだろ? 友達兼恋人みたいな、どっちかだけじゃなくてどっちもってのいいよな。弘とは、そういうのになりたい、な?」 『キス友』ってそんなに前向きなんだっけ……と思いながら、近づく京の唇を受け入れる。 「友達も、恋人も?」 「うん、そう──、どっちも、一番にして」  京はそう言って甘え、軽いキスを何度も落とす。  ──好きすぎて、ドキドキしちゃうけから、友達は無理かなぁ。でも…… 「ずっと京が一番だよ」  そう言って、キスをした。

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