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3 大学編 6 仲秋‐③ ※

 行為を終え、風呂に入った。汗だくで気持ち悪かったのもあるが、せっかくなのでラブホの風呂というものを体験しておきたかった。全裸のまま浴槽に湯を張る。アメニティとして置いてあった薔薇の香りの入浴剤を入れると湯が薔薇色に染まる。匂いもちゃんと薔薇だ。   「瑞季? 風呂沸いたから、入ろうぜ」    薔薇風呂に浸かって呼びかけると、ベッドで休憩していた瑞季がふらふらと覚束ない足取りで姿を見せる。   「ふろ?」 「二人で入れるくらい広いんだ。いい匂いもするし」    すると何を思ったか、瑞季はいきなり冷たいシャワーを浴び始める。頭から水を被って、髪がびっしょり濡れる。   「ちょちょ、そういう意味じゃなくって!」 「?」    冷水を浴びたくせに、瑞季はいまだぼんやりしている。   「あーもう、早くこっち来て。寒いだろ、風邪引いちゃうぞ」    瑞季はのそのそと湯船に入り、俺の足の間にちょこんと座る。これでいいのか? という目でこちらを振り返る。   「うん。あったかいだろ。体冷たくない? 大丈夫?」 「大丈夫。……このお湯、変な味だな」 「入浴剤入れたからね。薔薇の香りだぞ。てか舐めんなよ、ぺっしなさい」    徐々に覚醒してきたらしい瑞季は、そばに置いてあるアメニティグッズを興味深げに触る。薔薇以外にもジャスミンの香りとか柚子湯とかの入浴剤があって、剃刀やスポンジなんかも置いてある。    それから、浴槽についている色々なボタンを押していく。天井の灯りが消えたかと思うと浴槽がピカピカ光る。最初は青で、紫、オレンジ、緑と変わり、また青に戻ってくる。ラブホの風呂が虹色に光るって情報はマジだったのかと、俺は一人で感動した。しかもジェットバスでもあり、この間の温泉でもそうだったように、瑞季はずいぶん楽しそうにしていた。   「これは?」    壁にはめ込んである画面を指さして言う。   「テレビじゃない?」 「つけていい?」 「いいけど……」    どんな番組が流れるか、ある程度察しはつく。瑞季がスイッチをオンにすると、案の定アダルトビデオが、しかもちょうど濡れ場が再生された。瑞季は飛び上がって驚き、慌ててチャンネルを変える。しかし変えた先も結局アダルトビデオで、何が何だかわからなくなったのか、怯えたように俺の股の間に小さく座り直す。   「こ、これは……」 「AVかな」 「えーぶい?」 「視聴者をムラムラさせるために作られた動画。ほら見てよ、あの女の人、すっごい気持ちよさそうじゃない?」    顔は正直タイプじゃない。瑞季の方がかわいい。けど、乳と尻がでかく、形も良い。アソコを口で責められて、大音量で喘ぎまくっている。   「お、おれは、こういうのは……」    瑞季は頬を染めて目を逸らす。   「悪趣味だ。わざわざ他人のを覗くなんて……」 「大丈夫だよ、所詮創作なんだから。覗かれるためにこの人らもがんばって演技してるんだぜ。おお、すっごいおっぱい」 「っ……も、消すぞ」    テレビ画面に延びた瑞季の手を、俺はさっと絡め取る。そのまま背後から羽交い締めにして、耳元で囁いた。   「いいじゃん、見ようよ。恥ずかしいの? 変な気分になる?」 「ち、違うけど……」    そう言いつつ、瑞季はもじもじと膝をすり合わせる。   「こんな機会滅多ないしさ。家ではスマホの小っちゃい画面でイヤホンしながらでしか見れないからさぁ」 「お前、普段からこんなもの見てるのか」 「いや、最近はあんまりだけど。高校の頃とかは結構、お前に似た女優さん探してみたりしてたよ。貧乳のショートヘアで、ボーイッシュだけど色白で、プレイは甘々エッチがいいなぁ、とか条件絞ってくとなかなか見つかんなくてね……」    瑞季の肩がぷるぷる震えている。怒ったかなと思ったけど違うらしい。俺が手慰みにあちこち弄くっていたせいだ。背後からなのでよく見えないけど、上も下もしっかり反応を示している。後ろの蕾に指を這わすと切なげにヒクつく。さっきしたばかりなので柔らかい。   「んぁっ、やだ……」 「やだ? でも、指入っちゃうよ」 「は、ぁん、あ、あっ」    中指の第一関節まで入って、ゆっくり捏ね回した。ほんの入口に過ぎないけど、瑞季は俺の胸に寄りかかって喘ぐ。   「も、もっと奥……」    瑞季はもどかしそうにねだる。腰を揺すって催促するが、あえて浅いところしか触ってやらない。   「ねぇ、テレビ見てみ」    俺が促すと瑞季は素直に視線を移す。そしてすぐに目を逸らす。場所はベッドの上だが、画面の中の女も今の瑞季と同様に、背後から男に抱きかかえられてだらしなく足を開いていた。   「もっとよく見てよ」    瑞季の顎を取って顔をテレビに向けさせる。   「っあ、や、やだぁ」 「こういう時は、気持ちいい、だってば。あの人もすごくよさそう。わかるだろ?」    画面の中、女の背後から男の手が延びてきて、大事なところをめちゃくちゃに擦り上げる。その箇所をドアップで、といってもモザイクで何もわからないわけだけど、激しく激しく愛撫する様をまざまざと映し出す。    対照的に、俺の愛撫は穏やかだ。指先を入れ、入口近くを緩く撫でているだけ。代わりに耳たぶを舐り、乳首を捏ね回す。胸への愛撫は動画内にもあるが、俺の方が熱心だ。ていうか、瑞季の乳首の方がかわいい。女のものほど大きくはないけど、この慎ましさが良いのだ。色も瑞季の方がかわいいと思う。何しろ艶々の桜色である。   「しゅう、しゅうっ……」    はあはあと息を荒げて俺を呼ぶ。密着しているから鼓動まで伝わる。   「おく、もっと、おく……」 「奥ぅー?」 「んぅ、おくが……」    やたらとそっちを欲しがる。いつもなら前も触ってほしいと言ってくるはずだけど、二回目だから違うんだろうか。思えば二連続でしたことなんて今までない。今日だってそんなつもりじゃなかった。    『あぁああ~~! イクイクイクイク! イッちゃうイッちゃう! イクぅうッ!!』    突如絶叫が響き渡る。テレビの画面からだとわかってはいたけれど、びっくりして指の付け根までずっぽり入ってしまった。瑞季が触ってほしがっていたところ、つまり前立腺を強く擦ったと思う。   「あぁんッ……」    AVと比べるとかなり控えめな声を上げ、くたりと脱力した。俺の胸に背中を預け、一所懸命に呼吸を整える。   「急にごめんね」 「ん、うん……」    中がきゅんきゅん締まって指を食む。かわいい。俺は瑞季を抱きしめ、頬に口づけを落とした。

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