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3 大学編 6 仲秋‐④ ※
動画内ではいよいよ挿入のシーンに入る。四つ這いになった女優の尻をアップで撮った後、回り込んで全身を映す。重力に従って乳房が垂れ、余計に大きく見える。
「しゅ、しゅう……」
「のぼせた?」
「ちが……い、いれて……」
「……入れてるけど?」
「っ、ちが……こっち、これ、ちゃんといれて」
瞳を潤ませ、俺のものを優しく握る。実は既に完勃ちで、密かに瑞季の尻に擦り付けては楽しんでいた。
「ほんとにいいの?」
「いいからぁ、も、はやく……!」
背面座位みたいな姿勢のまま瑞季が無理くり挿入しようとするので慌てて阻止し、俺は浴槽から出た。どこ行くの、と泣きそうな声で瑞季が言う。
「ゴム取ってくる」
「そん、なくていい」
「だーめ」
大雑把に体を拭き、水滴をぽたぽたさせながらベッドサイドまで行き、二個目のコンドームを手に取った。時間がもったいないので歩きながら装着し、浴室へ戻る。
瑞季はいい子で待ってはいなかった。浴槽の縁に齧り付き、尻をこっちに向けてふりふりと振る。自分で後孔に指を入れて善がっている。
「おま、一瞬目離した隙に何てこと」
「だって、だってぇ……」
ボタンに手が当たったか、光のパターンが変わっている。薔薇色のお湯が紫一色にライトアップされ、果てしなく淫靡だ。
「なか、なかが……うぅ、はやく」
何が何だか要領を得ないが今さら焦らすつもりもないので、誘われるままに瑞季の体を貫いた。AV女優顔負けの嬌声が響く。凄まじい圧で締め付けてきて、気を抜いたら達しそうだった。
「しゅ、しゅうっ、あん、きもち、きもちぃいっ」
「うん、俺も、すげぇいいよ」
立ちバックなんて初めて。そもそもバックってあんまりしない。動く度、ちゃぷちゃぷと湯が跳ねる。屈んで浴槽に齧り付く姿勢では苦しいだろうと思い、瑞季の上体を抱き起こして壁に手を着かせた。
テレビ画面の中でも、女優がバックで突かれている。男が女の尻を掴んで高速でピストンする。リズムに合わせて乳が揺れ、女は恍惚の表情で喘ぐ。
「ねぇ、テレビ見て。お前も今あんな風に、俺に抱かれてるんだぜ」
「ひぁ、あぁっ、んや、やだぁっ」
「やだ? ごめんね。好きだよ」
好き、と囁くと中が脈打つ。もう耐えられないって感じで瑞季の体がずりずりと下がっていく。爪を立てて何とか壁に縋り付き、尻だけを突き出す恰好だ。白い尻が、律動に合わせてぶるぶる震える。
「でも、あんな動画の女の人より、お前の方がうんとエッチでかわいい。こんなこと知ってんの、俺だけだよな。いつも内気で、人見知りして、大人しいのに、実はこんなにエッチで、かわいい声で鳴いて、喘いでさ。こんな姿、絶対誰にも知られたくねぇよ」
学園祭で会ったあいつは、俺の知らない瑞季の側面を知っているのだろう。いくら愛していたって、相手の全てを丸ごと知り尽くすなんて不可能だ。そうわかっているのにやっぱり悔しい。瑞季が友達に見せる顔を、俺は知ることができない。俺の知らない瑞季の姿を知っているやつがいるという事実が悔しい。
だからこうして、俺しか知らない瑞季の姿をしっかりと目に焼き付けておくのだ。こんな風にあられもなく乱れる瑞季の姿を、俺以外には誰も知らない。これからも、決して誰にも見せたりしない。これは俺だけのものだ。誰にも渡さない。触れさせもしない。子供じみた独占欲と甘美な優越感とが胸の内にとぐろを巻く。
抽送の合間、俺は瑞季の背中や首筋に唇を落とし、皮膚をきつく吸い上げてはキスマークを作った。それはもうたくさん、桜吹雪みたいにたくさん散らした。白い肌に赤い痕が映える。これは証だ。俺だけのものっていう証。
「しゅ、しゅうやぁ、あッ、あぁいく、いくっ、いきたいっ」
「イキたいの? 出したい?」
「うんっ、んんッ……っい、きたい、い、いかせてぇっ……」
息も絶え絶えにねだるので、前を優しく触ってやる。ゆるゆると竿を抜き、汁でべったり濡れている亀頭を責める。すると瑞季はほとんど悲鳴みたいな声を上げ、狂ったようにかぶりを振る。そのくせ自ら腰をくねらせ、俺のものを深く飲み込もうとする。
「あぁあッ! だめ、もうだめ、またいっちゃうっ」
「いいんだよ、恥ずかしがらないで出しちゃえよ」
「しゅうっ、しゅ、いく、もういく、あッ、あッ、あ゛ぁあッ――!」
腰が激しく跳ね、中が変則的に痙攣する。前からはとろとろと精液が流れ落ちる。瑞季は全身をビクビク震わせながら座り込もうとするが、その体を無理やり持ち上げて俺は腰を打ち付けた。
「ひぃッ!? あぁうそ、だめだめ、いまだめ、いやぁあぁッ」
「ごめ、すぐだから……ん、気持ちい、出そう……っ!」
達したばかりの敏感なそこは締まり方が尋常じゃなく、数往復で俺も果てた。
瑞季はもう立っているのもやっとという具合で、膝をガクガクいわせながらその場にへたり込んだ。俺もつられて腰を下ろす。体温が上がりすぎたせいで、お風呂の湯がぬるく感じた。さっきまで流れていたAVはいつの間にか終わっていて、次の動画が勝手に再生されていた。
瑞季は気絶こそしなかったもののぐったり疲れ切っていて、指一本動かすのも怠いという調子だった。連続でやったからさすがの俺も疲れていたのだが、瑞季を風呂場に放置するわけにもいかず、体を拭いてやったりバスローブを着せてやったりと甲斐甲斐しく世話をした。
フリータイムで入ったので時間はまだある。軽く昼寝をしてから帰ろうということになり、二人でベッドに横になった。
「大学、今頃どうなってるかな」
「まだ学園祭やってるだろ」
「出店ってまだ出てんのかな。何時までなんだっけ」
「さぁ」
「もしかして後夜祭始まってる?」
「夜にはまだ早いだろう」
「そっか。なぁ、来年はちゃんと初日から参加しような。後夜祭も一緒に見ような」
「お前が覚えてたら付き合ってやるよ」
セックスの後の倦怠感って、心地よくて癖になる。無重力空間に浮かんでいるような、捉えどころのないふわふわした感覚。
「今日のお前さぁ、なんかいつもと違ったよね」
迫りくる睡魔に抗い、俺は小声で言う。
「なんか、いつもより積極的っていうか」
「……だって、お前の方が変だった」
「俺ぇ? 別にいつも通りじゃない?」
「違う。なんかすごく、ぎらぎらしてた」
自覚はないけど、瑞季がそう感じたならそうなのだろう。
「そんなに心配しなくたって、心変わりなんかしないぞ」
「それはわかってるけどさ。でもお前ってこういうことに疎いし……ラブホだって知らなかったし。騙されて誘われたらついていっちゃいそうで心配」
「まさか。おれはお前さえいればいいんだから。こんな恥ずかしいこと、お前とじゃなきゃ絶対しない」
瑞季はごろんと寝返りを打って俺の腕に抱きつき、楽しそうに笑う。
「それで、ふふ、『お前の魅力は俺だけが知っていればいい』だっけ?」
「そ、それは俺がさっき……も、茶化すなよぉ」
「茶化してない。情熱的なのは好みだ」
「そうなの?」
「うん……だからたまには、こういうのもいいかもな」
やがて瑞季はすーすーと寝息を立て始め、俺も素直にまぶたを閉じた。
せっかくアラームを掛けたのに制限時間ギリギリで飛び起き、精算機の使い方がわからずに手間取り、退室する他のカップルと鉢合わせて気まずくなったりしたが、完全に蛇足なのでここでは割愛する。
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