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いいんですか?クリスさん
「クリス。俺と恋人になってくれないか?」
それは、ただの罰ゲームだったんです。
ボードゲームで負けまして、絶対に負けないと豪語した俺シェスは、同僚の騎士クリスにこんな事を言う羽目になりました。しくしく。
「・・・・・俺は男だが?」
「うん。わかってる」
早く返事を言ってくれ。そうしないとこれがドッキリだと言えないですから。そういう事になっているので。
「お前、俺の事好きなのか?」
うぐ!!
いえ。寧ろ苦手です。すみません。
だってクリスって普段無口で全然喋らないんですよ?
しかも身長も高いし目つきは悪いし威圧感が半端なくてさ?普段あんまり好んで俺からは関わらないようにしてます。ハイ。だから、これが罰ゲームになったのですが。
「うっ!お前、そういう事・・・そのだなぁ」
あー面倒くさい!もうバラしてコイツにしばかれて楽になりたい。でも遠くから監視されてるしなぁ。クソゥ。
「・・・・・別に構わないが?付き合っても」
「あーそうだよねぇ?駄目だよねぇ?それが実は・・・はい?」
アレェ?聞き間違いかな?俺今信じられない言葉を聞いたような?んー?
「でも意外だな?お前は同性を好きになる様には見えなかったが?じゃあ、今日から帰りは迎えに行く」
・・・・・・・え?マジですかいな?
ちょっとこれは、洒落にならないのでは?
「あ、ちょっと待って!ク、クリスは、大丈夫なのか?俺ガッツリ男だけど?」
「男とは付き合った事はないが、まぁ何事も経験だ。なんとかなるだろ?」
ならねぇよ!!なんだその返答!ちゃんと断れよ!
しまったぁ!これどうやって収拾すんの?
俺達このまま付き合っちゃうの?
うっそ!!俺白目。
「シェス。お前に深く同情するわ。相手があのクリスじゃあ弁解も難しいな」
「あああああ!!俺馬鹿だ!あの男の冗談の通じなさを甘く見てた!ど、どうしよう!」
「なーんか面白そうな話してるな?クリスと恋人になったんだって?」
「テオ!お前他人事だからって笑ってんじゃねぇよ!俺は本気で悩んでいる!」
今日からアイツと毎日過ごすと思うと正直ゾッとする。
俺の楽しいナンパライフが今日終わりを告げたんだぞ!
「自分から誤解させておいて、そりゃねぇな?そんな嫌ならちゃんと謝って誤解とけよ」
あ。そうだよね?
こういうのは早いほうがいいよな?そうしよう!
「シェス。お疲れ」
「・・・・お、おう。お疲れ様」
でも、でもいざ本人を目の前にすると、言い出し辛い!!
「今日は割と早くに終わったから寄り道して行く。シェスは、甘い物は大丈夫か?」
・・・え?甘い物?・・・・大好物ですけど?
って言うか俺。三度の飯より甘い物が好きですけど?
「じゃあ行きつけのケーキ店に寄って食べて行こう。そこ俺の親戚がやっている店なんだが、とても味がいいんだ」
えーーーーーー!!マジですか?俺ぶっちゃけ、そういう店でケーキとか食ってみたかったんだよね?でもさぁ女の子と一緒に行って男がケーキ美味そうに食べてたらカッコ悪いと思っていつも我慢してたんだよ?それなのにいいの?
「アレェ?クリスお友達連れて来るなんて珍しいわねぇ?ちょうど新作があるから食べて行きなさいよ!」
ん?あれ?この人男だよな?それなのに何故女言葉を使っているのですか?実は見た目ゴッツイ女性とか?
「気にするな。あれはアイツの癖みたいなもんだ。それより何食う?」
「え?あ、ちょっと待って!」
・・・・さっきからクリスよく喋るな?
しかも、意外と普通だな?普段の殺伐とした空気が全くない。もしかして、俺コイツのこと勝手に勘違いしてた?
気になる事は沢山あるが、それよりも今は。
「うわぁ。美味そう」
どのケーキもめちゃくちゃ美味そうなんですけど?
選べない。どうしよう。
「これとこれは結構甘味が強いから、最初はこの辺りがオススメだな。もし、甘いのを頼むなら飲み物はコーヒーにしておけ」
え?貴方はここのケーキ全部食べたんですか?羨ましい!
「どれと迷ってるんだ?」
「ショートケーキとチーズケーキ。初めてだからシンプルなのがいいかと」
「じゃあ俺のを分けてやる。その二つを頼もう」
え?いいの?お前、俺でポイント稼いでどうすんの?
イケメンポイント。なんの得にもならねぇぞ?
「クリスは甘いの平気なんだな?意外だった」
「まぁな。俺も作るしな?」
・・・・・・・・・・・・・はい?
この人今、なんて?俺も作る?
「俺の親父はパティシエだからな。基本的なお菓子なら俺も作り方を習ってる。たまに趣味で作る程度だが」
「え?何それ。超羨ましいんですけど?」
「・・・・・・今度作って来てやろうか?」
えええええええ!!
俺、今日ずっと驚きっぱなしなんですけど?
それより、今、クリス笑ったよな?
「あ、じゃあ。気が向いた時、頼む」
「ああ。ケーキ来たぞ」
うわぁ。美味そう・・・・。こんな堂々と食べられるなんて。夢みたいだ。よし!一口。うーーーん!美味い!
「こっちも食ってみろ。美味いぞ」
俺は遠慮はしないぜ?どれどれ?ん!これも美味い!!
「くぁ〜!美味い。幸せぇ」
「それは良かったな」
それにコーヒーも飲みやすくて俺に丁度いいや。この店チェックしておこう。次回女の子と来る時に使わせて・・・・あ。
「ん?どうした?」
「あ、いや。あの、さ。昼間のこと、なんだけど」
「ああ」
そうだよ!俺呑気にコイツとケーキ食ってる場合じゃねぇよ!ちゃんと説明して断わんないと!
「じ、実はお、・・・」
「周囲には隠したいのか?もしかして」
「え?あ、うん?」
「まぁそうだな。普段は友人だと言っておけば問題はないと思うが。俺もわざわざ口にするつもりはない。俺に告白するなんてシェスもかなり勇気がいっただろう?」
勇気は必要だったな?お前にしばかれる覚悟の方だけど?
い、いや、そうではなく!!
「俺もお前の事そんなに知っている訳ではないし、ゆっくりお互いを知っていけばいいと思う」
あ、うん?お気遣いありがとうございます。
じゃ!ねぇよ!!それならもう友人でいいじゃん?そうしようぜ?あ、でも今言ったら友人になんてなれねぇよな?
「クリスは、嫌じゃないのかよ?」
「偏見はない。実は知り合いにそういうカップルがいたりするからな。問題ない」
え?そうなの?もしかして、それで俺の事受け入れちゃった感じ?これは益々言いづらくなって来たぞ?
「それに、実は俺もお前と話がしたいと思っていた。だから、驚いたが、正直少し嬉しかった」
ぐああああああああ!!そうだったの?
俺も実は話したみたら意外とコイツいい奴かもとか思ってた!でも、でも!!こんな形でそんな事気付きたくなかった!自業自得ですけれど!
「適当に返事をした訳じゃないから、心配するな」
心、配して、ねぇーーーーー!!どうしてこうなった!
なんか益々誤解されている。おかしい、何故こんな事に?
今更嘘とか言えねぇよ!どうしよう?本当は、本当はぁ。
こんな筈じゃなかったんです!
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