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無責任男とその後
「それで、あんたなんでまだここにいるのよ。」
1ヶ月経った今でも密さんにお世話になっているのは、別に仕方がないこと。
「俺を見つけたから、一度実家に戻るって。俺に余計なことを言った親戚類にお仕置きするらしい。だから、取り敢えずお留守番。」
「パパ、お仕置き?」
「うん。ゆうもパパを怒らせたらだめだよ。」
「こわいこわい?」
「うん〜、俺は怒られたことないから分からないけど。」
そもそも無口で無表情の彼からは怒った姿なんて想像つかない。爆笑している姿もそのかわり知らないけど。
「怖いわよ、恐怖よ。」
「なんで密さんが知ってるの。」
「初めて彼がここに訪ねてきた時、シノアとお前の関係はなんだって脅してきたの。私は受け入れられる方だって言ったら黙ったけど。」
「うけ?」
「密さんはママと同じって意味。」
「ひそか、まま?」
「うん。」
「うん、じゃないよ。まったく。それで?あんたはいつうちから出て行くんだ。」
「まぁ、一年経てば出て行くよ。」
「一年?それはまた、なんで。」
「なんで?んー、まぁ安静にしといたほうがいいかなと。」
「安静?そんなに怖い親戚なの。」
「いや、いや。親戚自体は別に大して怖くないけど。」
「ママ〜、描いた。」
ずっと絵を描きながら話を聞いていたゆうが紙を掲げて、こちらに見せてきた。辛うじて人間が4人いるのがわかる。
「これは、ママで、これがパパ。これが僕で、これがいもーと。」
「妹⁉︎」
「あれ、ゆうなんで知ってるの。」
「ゆうの妹!可愛い。」
「ふふ、そっか〜。女の子か〜。」
お腹を見つめながら、これから産まれてくる子に想いを馳せる。
「いつのまにあんたたち。」
「この前産婦人科行った時に分かったんだ。性別は分からなかったけど、ゆうが妹っていうなら女の子なんだろーな。」
「言ったの?彼に。」
「まだ。そうだ、この絵、送ってみようかな。」
「僕の絵、パパ見てくれる?」
「うん。見てくれるよ。」
「やった!」
4人で幸せに暮らせるのも間近かもしれない。
おわり
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