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無責任男の勘違い
それは勘違いと呼ぶ。
ゆうを密さんに預け、キリくんと向かい合わせで話をする。
久々に見た彼はどうにも痩せた気がする。
「婚約破棄を願い出たのはお前がいなくなる半年前からだ。婚約破棄をするには些か問題があって、時間を要した。その件で忙しくなった頃にお前は俺の前から姿を消した。」
「どうして?婚約破棄なんか…。だってあの子を、ツキを愛していたでしょ。」
「ツキは確かに大事な幼馴染だ。ただ、俺の中ではそこまでだ。」
それは、おかしな話だ。
そのツキに言われた。
『僕はまだ子供だからキリが手を出し辛いだけで、僕が大人になったらお前なんていらなくなるから。』
その後、幸せを噛み締めたような笑みを浮かべるツキとキリがいた。
「信じてくれなんて言わない。これから信じて貰えるような行動をとるつもりだ。シノアの子が俺の子じゃなくても大切に育てる。だから、頼むから、拒絶しないでくれ。」
「俺とキリくんの関係はセフレでしょ?」
「俺はお前と愛し合っていたと考えていた…。」
「そうなんだ。キリくんは、俺のこと愛してたんだ…。」
「ツキの件を終わらせてからきちんと話すつもりだった。」
そうなれば、やはり俺はなんて無責任者の阿呆なんだ。だってそうだろ。何も告げずにただ逃げて、一人で子供を育てるなんて無責任なことを言って、愛を与えられる筈だったゆうから父親を奪ったんだから。
「俺は取られると思った。ゆうを。怖かった。だから話さなかった。天涯孤独の身で、初めて愛した人の子を奪われたら俺は死んじゃうから。」
「すまない。一人にさせた。意固地になってないでさっさと告げれば良かった。愛してる。愛してる。だから、一緒になってくれないか。」
「俺は無責任な男だ。それでもいいなら、俺をもう一度愛して。ゆうを愛してあげて。」
「ゆうは俺の子か。」
「うん。」
「そうか、そうか。良かった…。もしも違うと言ったら、嫉妬のあまり本当の父親を殺すところだった。」
なんか、不吉な言葉が聞こえた気がする。
それを問い正す前に、キリくんは俺に口づけをした。愛しい人からのキスに俺は溺れて行った。
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