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無責任男の子の父親

はて、なんでこうなった。 幼稚園にゆうを迎えに行った帰り道。 BARの目の前にはゆうの父親が立っていた。 そのとき、ゆうを抱き抱えて、走り出した。 ぴきんと嫌なアンテナが立った的な奴だ。 「待て、シノ!シノア!」 初めて、聞いた。 そんな焦り混じりの声。 数分の追いかけっこの末、捕まったのは子供を抱きしめて走り回った俺の方。 「ママ〜、追いかけっこ終わり?」 「うん、そうだね。」 「シノア、それは俺の子か。」 「違います。ゆうは俺の子なんで、貴方には全く関係がありません。」 「誰の子だ。」 「は?」 「お前が俺の元から去った後に出来た男の子か。それとも、俺と過ごしていた時の男の子か。」 それを問いただされる理由が分からない。だってそうだろう。論点はそこじゃない。 「別に誰の子でもいいでしょう。貴方の子じゃないと言っているんだから。帰って下さい。ゴーアーウェイ。」 「ごーあーうぇい?」 「ゆうにはまだ早い言葉だから、覚えなくていいよ。」 「うん?ねぇ、ママ。あれ、パパ?」 「…うーん。違うよ。」 子供の鼻はきくらしい。 今までパパ?なんて聞いてきたことなかったのに、一瞬で気づくとは。 「シノア、その子の父親はどこだ。」 「いないいない。」 「なぜ、相談しない。」 「する意味がない。」 「ある。」 「ない。そもそもなんであると思うんだよ。全く他人だろ。ああ、それとも婚約者との間で子供が産まれなかった?」 「破棄した。婚約は破棄している。」 「は?」 破棄。 破棄ってまさか。 だってあんなに愛されていた。 これまでかというくらい愛されていた。 「なんで…。」 「大事なものを取り返すために。」 「大事なもの?それは、婚約者の子じゃなくて?ああ、そうか。あの子に頼まれたんだ。それは仕方ないね。貴方はあの子を愛していたから、あの子の我儘に乗ってあげたんだ。」 なんで、そんな顔をする? 傷ついた顔。 何かおかしなことを言った? 図星だったから、悲しんでいる? 「お前は、俺の何だったんだ…。」 「は?何言ってるの。俺と貴方の関係は…っとこんなのゆうに聞かせられない。」 「聞いちゃダメ?」 「うん、ダメ。ゆう、おうちに帰ろう。と、言うことで、俺帰るから。話すこと、もうないでしょ。ゆうは渡さない。俺が一人で育てる。それだけ。さよなら。」 ゆうの手を握りしめて、歩き出す。 なのに、ゆうはそこでぐっと立ち止まった。 「ゆう?」 「あれ、パパ?」 「だから、ゆう。それは違う。」 「ママ、嘘ダメって約束した。」 「んー、そうか。でも、本当に…。」 「ママが持ってる写真であの人いた。ママはあの人のこと好きでしょ?喧嘩したら仲直り。ママが言ってたもん。」 困ったな。ゆうに諭されるなんて。 「パパ、早くママを抱きしめて?ママね、いっつも寝ぼけて、キリくん、キリくんって言うの。パパがキリくんでしょ?」 瞬間、大きな身体で包み込まれた。 ゆうと一緒に身体全体を抱きしめられた。 「好きだ。愛してる。頼むから話を聞いてくれ。頼む。」 「キリくん…。」 久々に得た温かい体温に涙が溢れ出た。

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