3 / 7

無責任男の現状

身体を売ろうと思ったのはこの子が生まれてすぐのこと。 そして、それが無理だと気付いたのもすぐのこと。 いや、子供を持ったまま身体なんて売れるわけがない。 子供を預けようにも金がない。 悪循環 そうだ、泣き落とし… 最低なことを考えた瞬間だった。 方向転換。 少し田舎の方へ出向き、優しそうなご老人夫婦に見つかるように悲壮感を漂わせて、そこら辺のベンチに座った。 「見ない顔だね。こんな寒いのに子供が可哀想じゃないか。」 「すみません、住むところがなくて…。」 そんなくだらない作戦は結果的には成功した。 俺を拾ったのは老人でもなんでもなかったけど…。 「ママー、これ、これ、美味しいよ。」 「ふーん、じゃあ一口ちょーだい。」 「うん。あーん。」 3年の時が経ち、子供は立派な3歳男児に成長した。ぷくぷくのほっぺは子供らしいけど、どこかあの男に似ている気がしてならない。 「俺の遺伝子はどこに行ったんだろ。」 「くだらない事言ってないで、仕事なさい。」 「ああ、密さん帰ってきてたんですね。」 「なに、悪いの?」 「いえいえ、そんなこと。」 この目の前のオカマ、もとい密さんは俺を拾った張本人。俺の愚かな作戦を意図も簡単に見抜いていながら、それでも俺を拾った変わり者。 「ママー?仕事?」 「うん、仕事。ゆうはここで本読んでて。」 「うん。ママ、仕事頑張って。」 「うちの子ってつくづく天使。」 「あんたと違ってね。」 密さんの言葉を無視して、開店準備をはじめる。 子供は親に似るというわりに、俺には全く似ないゆう。性格に関しては父親にも似てない。 ゆうの父親はこう、無口で何も話さない人だった。あと、笑わない。 「ん?俺の前では笑わなかっただけか。」 婚約者の前では笑ってた気がする。 「あら、シノアちゃん、百面相してどうしたの?」 「あっ、新城さん。いらっしゃい。ちょっとゆうのことで考え事してた。」 「ゆうちゃんは可愛いからね。」 お客の新城さんは喋り方はオカマだけど、見た目は優しそうなサラリーマン。ふん、人は見かけに寄らない。 「そうだ、シノアちゃん。この前、シノアちゃんを探してる人がいたのよね。」 「俺?」 「んー、この人知りませんかって。写真見せられてね。咄嗟に知りませんって言ったら、残念そうに帰って行ったわ。」 「俺を探す人なんて…。」 まぁ、いなくはない。 さては、俺があの男の子を産んだことがバレた? んー、でも、まぁ違う男の子ですって言えばいいか。

ともだちにシェアしよう!