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無責任男の現状
身体を売ろうと思ったのはこの子が生まれてすぐのこと。
そして、それが無理だと気付いたのもすぐのこと。
いや、子供を持ったまま身体なんて売れるわけがない。
子供を預けようにも金がない。
悪循環
そうだ、泣き落とし…
最低なことを考えた瞬間だった。
方向転換。
少し田舎の方へ出向き、優しそうなご老人夫婦に見つかるように悲壮感を漂わせて、そこら辺のベンチに座った。
「見ない顔だね。こんな寒いのに子供が可哀想じゃないか。」
「すみません、住むところがなくて…。」
そんなくだらない作戦は結果的には成功した。
俺を拾ったのは老人でもなんでもなかったけど…。
「ママー、これ、これ、美味しいよ。」
「ふーん、じゃあ一口ちょーだい。」
「うん。あーん。」
3年の時が経ち、子供は立派な3歳男児に成長した。ぷくぷくのほっぺは子供らしいけど、どこかあの男に似ている気がしてならない。
「俺の遺伝子はどこに行ったんだろ。」
「くだらない事言ってないで、仕事なさい。」
「ああ、密さん帰ってきてたんですね。」
「なに、悪いの?」
「いえいえ、そんなこと。」
この目の前のオカマ、もとい密さんは俺を拾った張本人。俺の愚かな作戦を意図も簡単に見抜いていながら、それでも俺を拾った変わり者。
「ママー?仕事?」
「うん、仕事。ゆうはここで本読んでて。」
「うん。ママ、仕事頑張って。」
「うちの子ってつくづく天使。」
「あんたと違ってね。」
密さんの言葉を無視して、開店準備をはじめる。
子供は親に似るというわりに、俺には全く似ないゆう。性格に関しては父親にも似てない。
ゆうの父親はこう、無口で何も話さない人だった。あと、笑わない。
「ん?俺の前では笑わなかっただけか。」
婚約者の前では笑ってた気がする。
「あら、シノアちゃん、百面相してどうしたの?」
「あっ、新城さん。いらっしゃい。ちょっとゆうのことで考え事してた。」
「ゆうちゃんは可愛いからね。」
お客の新城さんは喋り方はオカマだけど、見た目は優しそうなサラリーマン。ふん、人は見かけに寄らない。
「そうだ、シノアちゃん。この前、シノアちゃんを探してる人がいたのよね。」
「俺?」
「んー、この人知りませんかって。写真見せられてね。咄嗟に知りませんって言ったら、残念そうに帰って行ったわ。」
「俺を探す人なんて…。」
まぁ、いなくはない。
さては、俺があの男の子を産んだことがバレた?
んー、でも、まぁ違う男の子ですって言えばいいか。
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