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番外編 学生時代 かなた

父さんと母さんを亡くしてから俺は日に日に憔悴していった ご飯が喉を通らない 眠ってもあのときの光景がフラッシュバックして眠れず、隈がひどくなる 薬を飲んだって眠れない 学校に行きたくなんかないけど意地で通った 好きだったサッカーをやめた 話しかけてくる友達を無視した そうするうちに俺に話しかけてくるやつはいなくなった ……一人を除いて 「幹人!おはよう!」 「……」 無視してさっさと歩く 「えっと、きょ、今日はいい天気だね!」 「……午後から雨降るけど」 「へっ!?あ、えーっと…… た、体育楽しみだね」 「今日体育ねぇじゃん」 うーんうーんと頭を悩ませながら俺についてきて俺に話しかけてくる 励まし方が下手すぎる 「幹人、次の移動教室一緒に行こう」 「幹人、お昼ご飯一緒に食べよう」 「幹人、この問題の解き方教えて」 「ねぇねぇ幹人、見てこれかっこよくない!?」 俺がどれだけ無視しても拒絶してもかなたは俺に話しかけ、ついてくる しつこくてしつこくて、ついキレてしまった 「何なんだよ、最近ずっと俺にまとわりつきやがって! 友達だって他にいるだろ! 俺に話しかけんな、うるっせぇんだよ! ひとりにしてくれよ!」 つい、かなたにあたってしまった 何も悪くないのに かなたの方を見れば泣きそうな顔をして立ちすくんでいる 「……っ」 俺はかなたにあんな顔させたいわけじゃないのに 足早にその場を去ろうとすれば 「まって!」 かなたが俺の服を掴む 目をウロウロさせながら時々うなりながら 「放課後、屋上前の階段で待ってるから」 それだけいって走って行ってしまった ……俺がちゃんと行くと思ってんのかよ バカらしい はぁ、とため息をついてかなたの走っていた方向を見ればボールペンが落ちている ……これ、かなたのか? 何かデジャヴってやつみたいだな ……届けに行くだけだからな そう思いボールペンを拾ってポケットにしまう

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