11 / 11
第11話
「ありがと、祐樹。つき合ってくれて」
「いや……おれも、したかったし」
まだ快楽の余韻の残るまろやかな声で祐樹が言った。
「そっか、またしような」
「え……、うん…」
落ち着いてくると今まで感じていなかった羞恥が込みあげてきて、ふたりとも口数が少なくなった。このまま寝てしまうのがいい気がする。
「おやすみ、祐樹。いい夢見てな」
「孝弘も。おやすみ」
電話を切って、シャワーを浴びた。
ふしぎな興奮だった。
受話器越しのセックス。小さな機械を通して、東京と北京に離れたふたりで快楽を分け合うなんて。いや、分け合うというより共有したのか?
こんなことをしたのは初めてだ。そこまで切羽詰って欲しい相手もいなかったし、女の子相手にはこんなことは言い出せない気もする。
国際電話でなにしてるんだか。
外国人の電話回線は盗聴されてるという話を思い出した。公安が盗聴していたら呆れているだろうか。
まあ大使館員でもない民間企業の会社員は平気だろう。
祐樹の北京入りまであと2週間ほどだ。またしたい気もするけれど、会えたときの楽しみにとっておくことにする。
初めてのシチュエーションで興奮はした。でもやっぱり声だけでは物足りない。現実に触れた肌の熱さをもう知っているから。
……にしても、舐めてほしいとか。
いままで一度も言われたことのない台詞を聞いて、ありがとうございますという気分だった。
ああ、録音しとけばよかったなんてことも思いつく。祐樹が知ったら怒りそうだけど。いや、実際にはやりませんけど。
今度会えたときには祐樹が泣くまで舐めたおそうと心に決めて、孝弘は部屋の電気を消した。
完
こんな夜もありますwww
まだ続きます!
次はいよいよ、10年前の祐樹の恋人が登場(*^^*)
憂鬱に出てきた、あの人とのお話です。
ともだちにシェアしよう!