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鑑定士の悪意

「1000超えー!!!  まさかだろ?」 王太子までが声を揃えてびっくりしてた。 それが何だかカッコいい自分って感じでドヤ顔していたと思う。 ふふん! 〔ぷきゅぅ!〕 「はっはっはっは!!  ほら、さきは嫌だってさ!  でも、HPもMPも子豚で1000超えるなんて  特別種決定だな。」 「笑いごとではありません!  益々、危ない魔獣ですよ!」 ピタリと笑いを止めた王太子が宰相に威圧を込めて僕を擁護した。 「さきは、勇者候補と戦い、私を守ってくれた。  言葉も理解している。  私が伴侶にと願うほど可愛い子を、お前は危険魔獣と言うのだな?  国王も認めたさきを、お前が認めないと言うのだな?」 言外にお前は国王よりも偉いのか、と嫌味を含んでいるのが分かった。 おい、アンタ、僕は子豚だけど、別に何かしたいわけじゃない。 ただ、安穏と生きていたいだけで、王太子の伴侶とかになりたい訳でもないんだ。 〔ぷきゅ、うきゅう、ぷきゅぷきゅぷひぷひきゅ。  ぷきゅ、ぷきゅうきゅぷきゅ、ぶいぶきゅきゅぷきゅぷひぷ。〕 「何を言ってるかさっぱりだが  知性を持って話している感じがする」 宰相はさすがに喋ってると認めざる負えないようだった。 「納得がいきません!!  鑑定されたくないのは、何かがあるからです!  知性があるなら、奸計が無いとは言い切れません!」 鑑定士は自分の鑑定の魔法陣が壊されたのも気に入らないようだし、難癖付けてるとしか思えなかった。 大体、僕は鑑定されることに納得していないし! むかっ腹だ! くそ~こうなったら特殊スキル変態で、驚かしてやる! トレンチコートか、パンツ何色系か、どんなのが出るかわかんないけど! この鑑定士泣かしてやる!! 特殊スキル 変態!!! さぁ、見て泣け! 自分だって泣きたい気分なんだ!! 変態を使うなんてな! 変態のスキルが発動したら、まるで、少女アニメの月に変わっておしおきよ!な変身シーンになった。 をいをい、ないわ、これ。ないわ~。 BGMがあるから許される変身シーンなのであって、無音状態のこのシーンは痛い、痛すぎる! しかも女装かよ! と思っていたら、普通にヒラヒラ系の衣装の男の子になった。 幼児体型の男の子。 あ、そか、僕、子豚だったわ。 何で変態でおっさんになると決めちゃってたんだろう。 しかもこのヒラヒラした服。 誰得だよ。 「さき、さきなのか?」 「むぅ、さきだけど、なにか?」 幼児がどんなに頑張っても、なんの威力もない。 「えぇ!!!!!  待って待って、子豚って、獣人でもない種族が豚なのに!!!  なんで人化してんです????  やばい、やばいです!!  何、この可愛さは!!!」 宰相が壊れた。 もしかしてレベルが上がると大人になれるのかな? せめて16歳の自分の姿になりたい。 「そこのかんていし!  ぼくだって、みせたくないことの、一つやふたつくらいあるんだ」 鑑定士はビックリしていた。 うんうん、この顔が見たかった。 「ふふん」 ドヤ顔していた僕を宰相が抱き上げようと手を伸ばして、王太子からその手を叩き落されていた。 「ったー!!」 「触るな!  私のさきだ」 「ケチ、ケチケチケチ!!!  さきちゃんを私だって可愛がりたい!!  こんな可愛い子だったなんて!!!」 「さいしょうさん、こんないたいけなようじをすきだとは、  あぶないやつだな」 「そうだぞ、さきは私の伴侶になるのだ  触るとバイ菌がうつる」 バカ話を繰り返していたら、鑑定士が腰を抜かして悪魔だのなんだのとブツブツ言っていた。 「おかしい、おかしい、絶対おかしい  こいつは豚じゃない、悪魔だ!!」 えーっと、僕自身も変態が人化なんだとは知らなくてだね、ちょっと驚かしてやろうってくらいの気持ちだったから、悪魔とか言われちゃうのはどうかと思うんだ。 ただ、子豚だっただけじゃないか。 安穏と暮らしたいだけじゃないか。 「えーっと、レオハルトさま  ぼくでていくよ。  ただ、ゆっくりいきていきたいだけなんだ。  だから、ごめんね」 「さき、それならここでゆっくり生きていけばいい」 僕は首を振る。 「だって、かんていしも、あくまとかいうし  だれかと、とらぶるをおこしたいわけじゃないんだ」 そう言うとスキルが解けて、元の子豚の姿になった。 イジメられていたころを思い出した。 誰かと何かが違うと言う事をまるで悪い事のように言われた。 体型がデブだから。 デブは迷惑だからって。 それを思い出してしまったら、大粒の涙がボロボロと落ちた。 この世界に来て、僕が何かした? 子豚として生きていくって決めて、ただそれだけじゃないか。 「さき、さき、お前は何か辛い思いをしてきたんだな。  大丈夫だ、私が守る。  お前のこんな可愛い姿を誰が咎めよう」 王太子は僕を抱きしめてくれた。 宰相も、鑑定士も、ただ茫然とそれを見ていたけど、何も言わなかった。 うっうっ、わ~ん 〔ぷきゅ、ぷきゅ、ぷぅきゅ〕 僕は王太子に抱きしめられて大泣きしてしまった。 「酷い宰相と鑑定士は厳罰を与えような」 「え!そんな!」 宰相が狼狽えた。 「嫌がるさきに無理矢理鑑定をして、拒否られたからと  悪しざまに言うのは罪はないのか?」 「それは」 「鑑定士よ、このさきの姿を見ても、悪魔か?」 「分かりません」 「そうか、さきはただ、ゆっくり生きたいと言ったことも聞こえなかったか?」 「聞いていましたが、でも!」 「聞いてもなお、疑うか  さき、鑑定をさせてくれないだろうか?」 いいよ。 もう変態も分かったし。 見られたくなかったのは、変態だけだもん。 〔ぷきゅ。  ぷぅぷきゅきゅぷ。  ぷきゅぷきゅぷ、ぷひぷきゅぷきゅぷぷ。〕 こくんと頷いた。 「鑑定士よ、鑑定すればいい」 そう言われて鑑定士はもう一度白い魔法陣を浮かび上がらせた。 その魔法陣は僕にかかり僕の中に沁み込む様に消えていくと、周りに僕のステータスが出た。 種族 豚〔幼体〕 称号 獅子王の伴侶候補  Lv.  15 HP  1100 MP  2000 スキル 暴食 愛玩 蹄の渾身一撃 痛覚耐性 衝撃耐性 水耐性 嗅覚 言語理解  特殊スキル 変態(幼児の姿) え、あれ、称号が獅子王の伴侶候補って!!! 何じゃそりゃ!! 出ていた涙も引っ込んだよ。 伴侶候補って称号になるんかよ。 そか、勇者候補も称号だって言ってたっけ。 それを見た王太子は、僕の口元にちゅうをした。 豚だよ、僕!! 「レオハルト様、ずるい!!」 宰相が、王太子を睨むとか…大丈夫かこの国。

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