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シェライラと言う存在
鑑定士は僕のステータスを見て、少しうなだれた気がした。
そんなに僕を悪いものにしたかったのかな?
その日のうちに、僕が人化出来ることが国王に伝えられ、僕は人の姿になると幼児になるのは分かった。
ん、これ幼児だからぽっこりお腹も可愛いよね、ってやつだよね。
どうにかスリム体型にはならないだろうか?
ソレと、せめて、16歳くらいに成長したい。
山際はちゃんと成人だったのに、なんで僕だけ豚で子供なんだよ。
そして、あの変態以来、王太子の溺愛が止まりません。
事あるごとに、僕に人化しないのかと、聞いてきます。
執務室にいるのも当たり前になりました。
宰相は僕にお菓子やら食べ物を与えようとしますが、王太子が何が入ってるか分からないと言って阻止します。
何が入ってるかって、宰相が一度、でゅふふ、と笑ったので、きっと良いものじゃありません。
そんな中で、僕も段々と王太子tいるのが当たり前で、何だか安心できる場所になっていた。
でも、どんなに言われても人化するのはあれ以来やってません。
だって幼児だもん。
それは何となく恥ずかしいし、もし成長していたら、王太子の好みから外れてしまうかもって、そんなことも考えてしまった。
鑑定でそれなりに僕の能力も周知されたし、騒ぎ立てられることも咎められることも、表向きは無くなった。
表向きは、だ。
王太子が常に抱っこで移動しているんだけど、トイレとかで離れることもある。
そんな時を狙って僕に嫌味を言う貴族たちがいた。
「汚い子豚の魔物がうろついておるわ
殿下の伴侶候補などと、国王までが戯れが過ぎるわ」
「豚だろ?
そりゃなんでも子供は可愛く見えるが、大人になって豚なんて
オークの様な醜い二足歩行をするようになるのかな」
嘲笑と嘲りが必ずと言って良いほど浴びせられた。
無視だ無視。
そんな中でも良い人がいた。
「何でそんなひどいことを言うんですか!
この子に罪は無いでしょ」
可愛い見た目の銀色の髪を長く伸ばした少年だった。
「シェライラ様、失礼いたしました。
ですが、貴方様もこの豚がいなければ、殿下の伴侶候補だったのです!
悔しくありませんか?!」
「レオハルト様が決めた事に不服はありませんよ。
このサキ殿を悲しませると、レオハルト様の怒りを買うんですよ、それを理解した上での陰口ですか?」
シェライラと呼ばれた少年は、王太子の伴侶候補として貴族たちが推していた人だった。
豚に伴侶候補を取られるなんて、僕だったら絶対嫌だ。
それなのに、こんな風に庇ってくれるなんて、良い奴だ。
「ぐっ!
失礼した、サキ殿!」
そう言って、貴族たちは踵を返すとそれぞれ散っていった。
「サキ殿、僕が抱っこして執務室に連れて行ってもよろしいでしょうか?」
うん
〔ぷきゅ〕
抱き上げられて、進行方向を向かせられたから、正直シェライラがどんな表情をしてるか分からなかった。
コンコン
「失礼します。
サキ殿をお連れしました。」
王太子は僕とシェライラを見ると、少し片眉を上げて不快感を示した。
なんで?
振り返るようにシェライラの方を見上げると、悲しそうな表情をしたシェライラと目が合った。
王太子の事が好きなんだ。
「さきを渡してくれないか?」
「あ、はい…」
抱っこされていた腕から、僕は王太子の腕の中へ移動した。
「さき、元気が無いな。
何かあったのか?」
「あの、サキ殿は反対派の貴族たちに、嫌がらせを受けていて
その、僕が見つけたので、ここまで連れてきました。」
シェライラは精一杯の笑顔で答えたけど、王太子はそれをそうか、と頷いただけで後は退出するように、と追い払った。
「トルク、以後お前がさきの動向を守れ」
トルクって呼ばれたのは宰相だった。
「え?良いんですか?」
「あぁ、気になることがあるんでな」
シェライラの事も気になるけど、王太子の不機嫌も気になった。
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