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比翼連理
ポツポツと話始めた。
僕が元は異世界の住人で、勇者候補だった山際の嫌がらせで死んだこと、そして神様にも勇者候補の召喚に巻き込まれてしまった事で何か分からないからって放置された上に、従魔として転生させられた事。
レオハルトと出会った森で、ただ、ゆっくり生きて行こうと思ってた事を、話した。
だからって自分の今の素性が分かったわけじゃなくて、自分でもこの世界に生き直したってだけの豚に過ぎなかった事を理解したことを話した。
そして、肝心な事、僕がデブで元の世界では死にたくなるほどの虐めを受けていた事を最後に話した。
「だから、レオハルトに聞いた。
もし、凄いデブになっても好きかって」
「好きだよ。
きっと丸いさきはもっと可愛いと思うな」
「そうそう、子豚だった時も痩せすぎでしたからね」
「え?
デブだよ、デブ、太ってるの!!」
「もちもちして気持ちいいだろうなぁ」
「もにゅもにゅしたいですねぇ」
えーっと、この世界ではデブの需要もあるって事?
「バカだな、さきは、どんな体型だってさきだろ?
私は、さきが好きだと言ったよ。
豚じゃないさきが好きだと言ったことがあったかい?」
「無い、よ」
「私は敢えて、豚ちゃんのさきさちゃんが好きですねぇ
もにゅもにゅと触りたいです」
トルクは揉む様な手の動きをして見せた。
「なんだか、凄く気にしてた事が
まるでバカみたいなどうでもいいことに思えて来た」
心の一番敏感なところに引っかかってた棘が抜けた様に、僕はホッとして笑えたんだ。
レオハルトを好きになって良かったって、心からそう思えた。
即位の準備は大変だったみたいだけど、あっという間にその時は来た。
直接僕には関係ないと思ってたんだけど、その場になって初めて伴侶として即位式に立つと聞かされた。
「聞いてない!
僕も立つなって、聞いてないよ!!」
「さきちゃん、即位の条件は伴侶を持つことだって聞いてますよね?
その伴侶って誰ですか?」
「えっと、僕」
「そうです!
伴侶として即位した国王の横に立つのは誰ですか?」
「僕、です」
「はい、良く出来ました。
さぁ、ちゃっちゃと着替えて、他の側室を斡旋するような貴族共を黙らせるように綺麗にしてもらってくださいね」
いつもはお世話なんてしてもらわないのに、お世話にをされて体中綺麗にされて、伸ばしっぱなしの髪も整えられた。
黒い髪に黒い瞳は異世界あるあるで、やっぱりちょっと、いやかなり珍しいらしく髪を結いあげるときも。なんだかビクビクしながら触られた。
「サキ様、綺麗な髪ですね。
つやつやだ」
そう言って編み込まれて、真珠の様な玉の簪で留めてくれた。
「あの、ありがとうございます」
「いえ!!
サキ様のお世話が出来て、嬉しかったです。
レオハルト様の伴侶になるお方ですもの」
普通の人は殿下と呼ぶのに、レオハルト様?という呼びに違和感を覚えた。
「僕、レオハルト様の側室のチェルシーです。
代々、側室が伴侶様のお世話をするんですよ」
そう言って、彼は笑った。
「どう、いうこと?」
「さぁ?
僕も側室と言われてここにいるので。
レオハルト様が抱いてくださったから、僕も側室になれました。」
「うそ、嘘だよ」
足元が崩れるような、冷たい汗が流れた。
ダメだ、信じない。
だってレオハルトは側室とか嫌だって言ってたんだ。
そこに、トルクが迎えに来た。
「さきちゃん、準備できた?」
「トルク様、はい、準備出来ました。
こちらのチェルシーが手伝ってくれて…」
「そう、良いね。
綺麗にできたね。
けど、この髪飾りは駄目だね。
レオハルト様がお揃いのをとさきちゃんに贈ってるはずだよ
誰に頼まれたのかな?」
「チッ!
髪飾りも把握済みか。
ほら、返しますよ、豚さん」
可愛らしい感じだったチェルシーは、途端に下卑た言葉遣いになった。
「少しは動揺して、失敗したらいいと思ったんだけどなぁ
”レオハルト様に抱かれて、側室になりました”って
結構青くなってたからうまくいくと思ったのに」
「さきちゃんに関して、殿下の御心は動きませんよ。
貴方の上の者にお伝えなさい。
殿下のスキルが『愛に殉ずる者』だと」
一瞬目を見開いてから、チェルシーは大笑いした。
「死んでも構わないってか
なら、こいつをどうにかしたら、簡単だな」
そう吐き捨てた言葉に、僕は足枷に何かなるもんか、と叫んだ。
「僕は失敗しない!!
レオハルトを死なせたりもしない!!
あいつを守るのは僕だ!」
そう宣言するように叫んだら、いつもの声が聞こえた。
―スキル愛を貫く者を取得しました。―
―称号比翼連理を取得しました。―
今回のスキルは、僕にとって一番必要なスキルだったと思う。
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