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未来のだけどね。
一番びっくりしたのはレオハルトだったと思う。
「さき、子供が出来たのか?」
「うん、多分」
実は魔法省に行ったのは、王母の称号について聞きたかったからだった。
いずれなると言う意味なのか、それとも。
そこで聞かされたのが、転生者に鑑定は意味が無いという事だった。
称号を取ったという事は、既にそうなっているという事と、取り放題の称号とスキルで鑑定が追いつかないと言うものだった。
そして、種族までもが変動するので、鑑定が出来ないという事だった。
その話から既に王の母という事は、生まれくる子は、次代の王であると言う約束ごとになる。
レオハルトにも王父とあった。
「喜んでくれる?」
「当たり前だ!」
抱き上げられ、そっとキスをされた。
「嘘かもしれないじゃないですか!
そこの豚は卑しいのだから、いくらでも嘘をつきますよ」
「卑しい、だと?」
「チェルシー!やめなさい!」
老獪な爺さんの制止を振り切って、更に罵詈雑言を浴びせた。
「ただの珍しい豚が国の伴侶などと笑わせるな!」
「そうか、ではただの豚ではない、さきは伴侶に相応しいのだな。」
逆手に取る。
「あのね、僕は転生者なんだ。
だから、種族も変化するし、スキルも称号も取り放題なんだ。
つまり、ただの獣人の君とでは、雲泥の差だと言う事なんだよ。」
「転生者だと?」
爺さんは分かったらしい。
長生きしてそうだしな。
「はい、転生者です」
「そうか、そうであったか。」
爺さんは膝をついて、お父様お母様、そして僕たち二人に正式に謝罪した。
「さき様、私の振る舞い、過ちをどうかお許しください。
この国を盤石なものとするために、力のある子がと、そう思い、いらぬ事をしました。
この首一つで収まるなら、差し出しましょう。」
この爺さんも、国を憂いたのが行き過ぎただけと思うけど。
「先々代の国王の謝罪、お受け致します。」
レオハルトが先々代の国王だと告げた。
なら、お爺ちゃんじゃないか!
そりゃ、得体の知れない豚が伴侶なら心配もするわ。
「お爺さまですか?」
「私を爺と呼んで下さるか」
「さき、こんな好色爺なんざ、呼ぶ必要ないぞ。
ほっとけ!
あれだけそこのに罵詈雑言言わせといて今更なんだ!」
「レオハルト、自分で謝罪を受け入れたのに、ダメだよ」
「さきは優しすぎる!」
チェルシーは自分が蚊帳の外だった事にも、転生者の意味も分からず、更に悪態をついた。
「やめんか!!
転生者とは、この世界の力の全てと言って良い。
その者が伴侶ならば、この国は盤石ぞ!」
国の事を考えすぎてる。
強い世継ぎを残さないといけないプレッシャーはもの凄かったのかもしれない。
この人はこの人の責務を真剣に捉えた結果、もしかしたら、自分の心も犠牲にして尽くして来たのかもしれないと思えた。
「お爺さま、貴方が駒にしたのが問題なのです。
転生者の知識もなかったのでしょう。
ですが、二度と僕の目の前に出て来て欲しくない。
手段はお任せします。」
お爺さまは、分かったとだけ告げて、チェルシーを連れて行った。
どんな手段になろうと、僕は目を瞑ると決めていた。
「あの、さきちゃん、赤ちゃんできたの?」
お母様が恐る恐る?聞いて来たので、普通にいいえ、まだですよ、多分と笑って言った。
「え!?」
「いや、まだ、確実かは分かりませんが、まあ、濃厚なのかな、と」
「さき?」
レオハルトが半泣きのような顔をしたから、魔法省での話をした。
称号があると言う事は、既に決まった事であり、起こった事だと言う事を。
「レオハルトも王父とあったでしょ?」
「そう言えば、新たな比翼連理に気を取られていたが。」
「だから、そう言う事ですよ。」
「それは、今じゃなくても決まった事だと言う事か。」
頷くと、がっかりした顔とまだ二人の時間が楽しめるのとで複雑なレオハルトがいた。
「チェルシーを追い払うためでもありましたけど、お母様には近い未来に教わる事になりそうです。」
お母様は嬉しそうに、当たり前だから心配しないで、と返事を貰った。
「はぁ、疲れた。
もう、あんなの、ほんっと嫌!!
子豚の僕とレオハルトとの方がまだ、意思疎通があったよ!」
周りから笑いが起きて、レオハルトがそりゃ必死に汲み取ってたからだ、と付け加えた。
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