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お父様お母様、そして

「さき、楽しい話が出来たか?」 今までの執務室から、王の執務室へ引っ越したせいで、レオハルトも、トルクも仕事量が一段と増えていた。 「転生者だと世界征服も夢じゃないみたいだよ」 と笑って言ったら、トルクがそれなら、私たちの天下ですね!とにっこり笑って答えた。 「ほんと、もし困った事が有ったら、僕の力で解決しちゃうよ~」 「さきを戦場に連れて行きたくは無いが、城に置いて行くのも私は嫌だ。  ならば、争いが無いよう、治世を心がけよう」 そんな話をしていたら、王の座を譲った国王が訪れた。 僕を見つけると、おいでおいでされたから、側へ行くとヨシヨシって頭をなでてくれた。 「さきちゃんや、お父さんとお散歩しない?」 「え、良いんですか?」 「お母さんもね、さきちゃんと一緒にお散歩して、ご飯たべよって」 レオハルトが言っていたように、二人は仲が良いんだ。 その家族の中に僕も入れてくれた。 「父上、さきは私のですからね。  母上にも言っておいてくださいよ」 「レオは仕事をしてれば良いんだ  わしらは隠居した身ゆえ、自由なのじゃ」 「くっそー、ぽやぽやしやがって!」 珍しくレオハルトが悪態をついていた。 それを微笑ましく見ていると、国王がレオは良い人を伴侶に迎えたねって言ってくれた。 「さきちゃん、わしの事もお母さんの事も、堅苦しく呼ばずに  お父さん、お母さんって呼んでおくれ」 「じゃぁ、お父様、お母様で」 日本のお金持ちじゃないから様付けの呼び方なんて慣れてないけどさすがに、お父さんお母さんとは呼べなかった。 「んー、よいかの  では、仕事にいそしみ給え」 僕はお父様と連れ立ってお母様の待つ庭へと向かった。 「あ、来た来た  さきちゃん!  こっち、美味しいごはん用意したから」 お母様が手を振って呼ぶ。 う~ん、お母様も男性なんだよね。 もう、正しく、異世界。 「お母様、お待たせしました」 「待ってないから大丈夫。  お散歩の前にしっかりご飯食べて、運動しましょ」 お母様は小さくしたレオハルトみたいだった。 金髪の美形、でも優しくて愛嬌のある感じ。 お父様は威厳に満ちた、ミノタウロスみたいな人だった。 顔がって言うんじゃなくて、雰囲気ね。 実際、獣化するとバッファローらしいんだけど、見たことはないんだ。 「あのね、さきちゃん  体力的にはどうなのかなって、心配になってね、その、ほら  レオ、無茶してないかと思って」 それは所謂、アレだろうか。 無茶してるか、してないかと言われたら、大分してる。 それは僕も最中は、自制が利かなくて快楽に流されちゃってるから。 「えっと、まあ、それなりに、です。」 多分顔を赤くしていたと思うんだ。 「仲良しなのは良い事だからね。」 お母様は、フォローを入れつつお互いで赤い顔をした。 「ふぉっふぉっふぉっ、さあ、食事にしよう。  庭で食べるなんて、どれ位ぶりかの?」 仲の良い二人は、国王としてその伴侶として色々キツいことも有っただろうけど、こうやって笑い合えているのが羨ましかった。 食事をしていると、あのチェルシーが老齢な男性を伴ってやって来た。 「ごきげんよう、アウリッツ様」 お父様に向かって挨拶をした。 そして、お母様を無視して、僕に挨拶の言葉をかけて来た。 「こんにちは。  豚様」 「無礼であろう?  チェルシー、さきは、国王の伴侶ぞ!」 お父様が、チェルシーに礼儀作法も知らない兎を庭から連れて行くように護衛騎士に告げた。 「アウリッツ、そう怒るでない。  チェルシーも、種族名ではなくお名前をお呼びしなさい。」 老齢な男性は笑いながら、諌めた様に思わせた。 「はぁい、豚のさき様  ごきげん麗しく」 「はい、チェルシー、でしたっけ?  ここへは何用で来られました?」 お母様を無視したのが許せなかった。 種族が豚なのは最初からだし、お父様が隠居したから国王としての力はもう無くても、僕は現役の国王の伴侶だし、転生者だ。 いじめられっ子のスキルがあるから、こんな事には慣れてるさ。 「あぁ、豚伴侶の顔を見に来ただけですよ。」 「チェルシー、あまり豚豚言うな。  肉が食いたくなるだろ」 老齢な男性は、お父様を呼び捨てにするくらいだから、親しいのかそれなりの地位なのか。 「トルガノ、シェライラだけでは満足しなかったか?  そこの小賢しい兎も犠牲にするか?」 「チェルシーはレオハルトの側室候補だ、無下にするな。」 「側室は持ちませんよ。  認知症のお爺さんの面倒はたいへんですから、徘徊に気をつけないと。  チェルシーさん、ちゃんと介護してます?  オムツを履かせないと、垂れ流しして大変なことになりますよ。」 にっこり笑って、多分、迷われてるんですね、と言ってやった。 「何だと、豚風情が!」 「えぇ、豚ですよ、それが何か?」 「下位種族のくせに!」 「下位かもしれませんが、貴方より権力も地位も上なんですよ。  頭悪いですね。」 なんでこの人達は種族だけしか見ないんだろう。 トルクが言っていた通りだ。 「ではレオに断罪して頂けば納得されますか?」 「ちょっとだけ珍しい豚の癖に!」 「ちょっとじゃなくて、かなり、です。」 ニコニコしながら訂正した。 断罪はされたくないらしい。 「はあ?黒髪だからか!」 無言で笑っているとイライラしたようだ。 その辺りでやっと到着したらしい、レオハルトが半獣になって怒っていた。 「さき!  母上も無事ですか!?」 「なんじゃ、レオ、わしの心配はしてくれんのか?」 「父上は殺したって死にません!」 言い切ったよ。 「レオハルトよ、チェルシーを側室」 「断る!  こんな気持ち悪い奴いるか!  そもそも、さき意外横に立たせる気もない!」 「兎の繁殖力を見込んで言ってるのかなぁ、と思いますけど、必要ないですよ  既に、子ならいますから」 「え?!!」 一斉に僕を見た。

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