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言祝ぎの誓い
モテるんだろうなぁって漠然と思ったところで、もし、また、元カレとか伴侶とか婚約者とかそんな存在が現れたら、僕はもう無理だ。
そんな事を考えてる段階で、トルクに落ちてることを認めるようなもんだけど。
「トルクは、その頃ってすごくモテたよね?」
「まぁ、それなりには」
「今も、モテるよね?」
「昔ほどではないけどね。
仕事も忙しかったし、何よりもレオハルトの後始末ばっかりして
この100年ほどは枯れてたねぇ」
「でも、でもさ、もし、昔の恋人とかが国にいて、今のトルクを見て
もう一度付き合いたいとか、伴侶になりたいとかそんなことになったらどうするの?」
かぶったフードの隙間から、トルクを見上げた。
「無理だな。
だって、こんなに可愛い人がいるんだ。
よそ見なんかできないし、ずっと不安な顔ばっかりだったのを笑顔にする楽しみがあるのに、めんどくさいよ
今まで私じゃなくて大丈夫だった人なんか、どうでもいいし
私じゃなきゃダメなさきちゃんを作るって楽しみの方が重要!」
そんな話をしていたら、街の影が見えて来た。
「さきちゃん、あの街で今夜は宿を取ろう!
そしてこれからどんな風に向かうか、相談しようね」
既に伝令が飛んでいたのか、トルクと、僕には各国からの使者が宿屋に押し寄せた。
宿を取った途端に、宿の主人から来客を告げられて、階下をこっそり覗くとやたら偉そうな人たちがいて、”英知様が”とか囁いているのが聞こえた。
「トルク、どうするの?」
「まぁ、まずは今日のご褒美を貰ったら、どうにかしよう
ほら、さきちゃん、ここ
ご褒美」
唇にココって指を指す。
まさか、しっかりやり通すとは…
「二言は?」
「無い、です」
何の儀式だってくらい、時間をかけてしまったけど、トルクの首に腕を回して、屈んでってお願いしたら、顔が近づいてきた。
慣れない唇の感触と、初めてするトルクとのキスに物凄く緊張した。
軽く触れるだけのはずが、トルクにしっかり腰と頭を押さえられて、深くしてしまった。
舌を絡ませて、上あごを舐められて、ゾクゾクした感触が背中を這った。
「んっふぅ」
分かっていた、
僕もどこかで期待していたって事を。
「はい、ごちそう様」
「や、やらしー」
「初めて、さきちゃんとキスしちゃった!」
態と軽く言ってくれてるのが分かる。
「あのね、トルク
僕はね、僕が一番先で、僕だけをみてくれる人を好きになりたいんだ。」
揺れる気持ちに区切りを付けるように、トルクに伝えた。
すると、すごく、凄く優しく笑ってそんなの当たり前だって言ってくれた。
「さきちゃん、前に私が裁きを下した勇者候補のタイガが言っていた、#漢字__・__#の名前を教えてくれる?」
僕は部屋にあったメモ用紙に、咲季、と書いた。
「これが、花が咲くとかそう言う意味の字に、僕のいた世界は季節が4つに別れていてその季節ごとにイベントがあったり、風習があったりして、凄く綺麗なんだ。
この季節の字が入って、咲季、だよ」
「咲季、難しいけど綺麗な形だ。
ね、いま、私に誓わせて。」
「え、何を?」
「神の愛し子咲季、私の生涯を貴方に捧げます。
魂の約束は魂が事切れるまで。」
「トルク…」
「これがこちらでのサキと言う言葉の意味。
言祝ぎだよ」
あれって本当だったんだ。
光が入った魔法陣がトルクを包み、消えていった。
「今の何?」
「だから、言祝ぎの誓い
私の魂は咲季ちゃんのものだって、神様と咲季ちゃんに誓いを立てたの」
「だ、ダメだよ!
そんな大事な事!」
「私がそうしたかったんだ。」
この人の愛し方は、全身全霊をかけて僕に好きだと言ってくれる。
転生者だからとかじゃなくて、豚だからいいとか、色々残念なとこもあるのに、そんなこの人が大事なんだ。
「泣かないで、咲季ちゃん!
大好きだからしたんだよ?
それに簡単に死なないし!
これからいっぱい、イチャイチャする時間を持つんだから
それにね、子沢山が夢なんだ。
沢山の子供達と君がいて、私の幸せが完成するんだから、ね?」
「なら、僕も誓う!
僕もトルクに生涯を捧げる!
この魂も全て、トルクと共にある!
だから、僕ができる全てを使ってトルクを守る!」
自棄じゃないけど、トルクの愛に応えたかったから、尻軽だとか言われても良い!
この人を好きだと思う事を、止めたくなかったんだ。
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