31 / 75

言祝ぎの誓い

モテるんだろうなぁって漠然と思ったところで、もし、また、元カレとか伴侶とか婚約者とかそんな存在が現れたら、僕はもう無理だ。 そんな事を考えてる段階で、トルクに落ちてることを認めるようなもんだけど。 「トルクは、その頃ってすごくモテたよね?」 「まぁ、それなりには」 「今も、モテるよね?」 「昔ほどではないけどね。  仕事も忙しかったし、何よりもレオハルトの後始末ばっかりして  この100年ほどは枯れてたねぇ」 「でも、でもさ、もし、昔の恋人とかが国にいて、今のトルクを見て  もう一度付き合いたいとか、伴侶になりたいとかそんなことになったらどうするの?」 かぶったフードの隙間から、トルクを見上げた。 「無理だな。  だって、こんなに可愛い人がいるんだ。  よそ見なんかできないし、ずっと不安な顔ばっかりだったのを笑顔にする楽しみがあるのに、めんどくさいよ  今まで私じゃなくて大丈夫だった人なんか、どうでもいいし  私じゃなきゃダメなさきちゃんを作るって楽しみの方が重要!」 そんな話をしていたら、街の影が見えて来た。 「さきちゃん、あの街で今夜は宿を取ろう!  そしてこれからどんな風に向かうか、相談しようね」 既に伝令が飛んでいたのか、トルクと、僕には各国からの使者が宿屋に押し寄せた。 宿を取った途端に、宿の主人から来客を告げられて、階下をこっそり覗くとやたら偉そうな人たちがいて、”英知様が”とか囁いているのが聞こえた。 「トルク、どうするの?」 「まぁ、まずは今日のご褒美を貰ったら、どうにかしよう  ほら、さきちゃん、ここ  ご褒美」 唇にココって指を指す。 まさか、しっかりやり通すとは… 「二言は?」 「無い、です」 何の儀式だってくらい、時間をかけてしまったけど、トルクの首に腕を回して、屈んでってお願いしたら、顔が近づいてきた。 慣れない唇の感触と、初めてするトルクとのキスに物凄く緊張した。 軽く触れるだけのはずが、トルクにしっかり腰と頭を押さえられて、深くしてしまった。 舌を絡ませて、上あごを舐められて、ゾクゾクした感触が背中を這った。 「んっふぅ」 分かっていた、 僕もどこかで期待していたって事を。 「はい、ごちそう様」 「や、やらしー」 「初めて、さきちゃんとキスしちゃった!」 態と軽く言ってくれてるのが分かる。 「あのね、トルク  僕はね、僕が一番先で、僕だけをみてくれる人を好きになりたいんだ。」 揺れる気持ちに区切りを付けるように、トルクに伝えた。 すると、すごく、凄く優しく笑ってそんなの当たり前だって言ってくれた。 「さきちゃん、前に私が裁きを下した勇者候補のタイガが言っていた、#漢字__・__#の名前を教えてくれる?」 僕は部屋にあったメモ用紙に、咲季、と書いた。 「これが、花が咲くとかそう言う意味の字に、僕のいた世界は季節が4つに別れていてその季節ごとにイベントがあったり、風習があったりして、凄く綺麗なんだ。  この季節の字が入って、咲季、だよ」 「咲季、難しいけど綺麗な形だ。  ね、いま、私に誓わせて。」 「え、何を?」 「神の愛し子咲季、私の生涯を貴方に捧げます。  魂の約束は魂が事切れるまで。」 「トルク…」 「これがこちらでのサキと言う言葉の意味。  言祝ぎだよ」 あれって本当だったんだ。 光が入った魔法陣がトルクを包み、消えていった。 「今の何?」 「だから、言祝ぎの誓い  私の魂は咲季ちゃんのものだって、神様と咲季ちゃんに誓いを立てたの」 「だ、ダメだよ!  そんな大事な事!」 「私がそうしたかったんだ。」 この人の愛し方は、全身全霊をかけて僕に好きだと言ってくれる。 転生者だからとかじゃなくて、豚だからいいとか、色々残念なとこもあるのに、そんなこの人が大事なんだ。 「泣かないで、咲季ちゃん!  大好きだからしたんだよ?  それに簡単に死なないし!  これからいっぱい、イチャイチャする時間を持つんだから  それにね、子沢山が夢なんだ。  沢山の子供達と君がいて、私の幸せが完成するんだから、ね?」 「なら、僕も誓う!  僕もトルクに生涯を捧げる!  この魂も全て、トルクと共にある!  だから、僕ができる全てを使ってトルクを守る!」 自棄じゃないけど、トルクの愛に応えたかったから、尻軽だとか言われても良い! この人を好きだと思う事を、止めたくなかったんだ。

ともだちにシェアしよう!